
「カモシカだ!」
浅間山(あさまやま)の外輪山の崖を下っている時だった。
70度ほどの崖に山道がひかれてある。
よくぞ、こんな所に先人は道を築いたものだ。
二本足の私が、2本のストックをついて、
えっちらおっちら下っていると、
「クィィィ~~ン」
鳴き声が聞こえた。
20mほど離れた眼下の岩場に、カモシカがいる。
ツノが生えているので、オスだ。
体重は、70キロほどか、結構大きい。
草を食んでいる。
私が、近づいてゆくと、尖った岩峰へと、食事場を移した。
やがて私が、50mほど下った所で、振り返ると、
岩の上でスックと背筋を伸ばしたカモシカ。
(冒頭写真 中央右)
人間であれば、ザイルを伸ばして確保してもらわないと、
立っていられない断崖で、私を見おろしている。
(悪かったね、食事の邪魔をして)
カモシカは登山者に好かれている。
人間を見ても、過剰反応しないし、
顔つきにも愛嬌がある。
鹿ほど大量にいないので、生態系にも悪さを及ぼさない。
足が速い人を称して、《カモシカのような足》と言うが、
それは、間違いである。
鹿の足はスラリとして伸びやかで綺麗だが、
カモシカの足はずんぐりしている。
どちらかと云うと、太い。
なんせ、山岳地帯を縄張りとしている。
短く太い足が有利なのだ。
必要なのだ。
カモシカ君の代弁をさせて貰えば・・
「ぶっかっこうだとぅ?なんか、文句あるかい!」