
若いころ・・20代の頃と言おうか、
フレンチを食べる機会があった。
オードブルが出てきて、フォークを使ったと思ったら、
すぐに片づけられ、スープが出された。
(なんだヨ、スープって、早く肉とかガツンと食べたいのに)
同じころ、日本料理のコースを食べる機会があった。
八寸と刺し身をたいらげたと思ったら、
《箸休め》なる澄まし汁が出された
(おいおい、休みたくないから、ド~ンときて!)
20代の頃には、スープだの汁だのの意味がわからなかった。
最後のご飯の時に、味噌汁がついてくるのは、理解できるが、
お酒を飲んでいる最中の汁モノが、若者の理解を越えていた。
時が経つこと数十年。
我が家では、晩酌の最中に、汁モノが出てくる。
喜んでジュルジュルすする私がいる。
酒を呑んでいるさなかにスープ類をのむ意味を、
体験的に学習した。
医学的には、身体を冷やさないだの、胃の中を薄めるだの、
様々あろうが、
本人の感覚を述べると、
翌朝の調子が良い。
汁ものを飲んだ時は、明らかに体調が優れる。
ほんじゃ、いつも飲んでやろう・・となる。
今ひとたび、20代の頃のシーンに戻ってみよう。
コース料理の最後に、デザートと紅茶がふるまわれる。
デザートはいいとして、紅茶が飲みたくなかった。
せっかくの酔いが覚める気がした。
和食でも同様だ。
お茶を飲まされると、興ざめしたものだった。
それが今・・・
紅茶だのお茶だのを、ガブガブ飲んでいる。
酔いが覚めることはないし、興ざめもしない。
むしろ、余韻が楽しい。
さらに、翌朝の目覚めが素晴らしい。
食事中に水分を摂る意義が理解できた。
理解するのに、ずいぶん長い年月がかかった。
その年月は無駄ではなかった。
なかったものの、もっと早く教えてほしかった。
そうだったのか!
スープを飲まなきゃ、次の料理が出てこなかったのは、
なにがなんでも、スープを飲ませようとした、
身体の事を考えた料理の歴史のたまものだったのか!