「おっアレは?」
群馬と栃木の県境にある《皇海山》すかいさん。
山から谷川を降り下っている時だった。
流れる川を、右岸に左岸に何度も渡らなければならない。
石から石に足を運ぶ。
っと・・・
パシャリッ 何かが動いた。
振りかえると、小さな水たまりの落ち葉の中に、
うごめくモノがいる。
落ち葉をかき分けてみる。
キラリッ
黄金色に光るそやつは、
ヤマメではないか。
おそらく、本流から取り残された水たまりから、
脱出できずにいたのだろう。
落ち葉にもぐり込んで、もがいているのだ。
水の中に手をつっこむと、いとも簡単に捕獲できた。
ゴクンッ
一瞬、喉がなる。
グゥ
腹もなる。
実に旨そうな、いや、美しい魚体。
そっと身体をおし包み、本流まで運んで、
逃がしてやった。
からだをくねらせ、岩の下にもぐり込むヤマメ。
これからの厳しい冬を越せるのだろうか?
さだかでないのだが、
小さな水たまりからの脱出と、
私の食欲からの脱出という難関をクリアしたのだから、
なんとか生き延びてほしいものだ。