「冬の海に入るんですか?」
眉をひそめられる。
ウインドサーフィンをしていると、
いつの間にか季節は、冬に突入しており、
キンッと凍て付く、寒風吹きすさぶ海にのりだすことになる。
しばらく海上を時速数十キロで滑空していると、
手がかじかみ、足がしびれ、
唇が青くなって、頭の芯が痛くなる。
そんな時・・・
波打ち際の海中にからだを沈めるのである。
ちょうどお風呂に入っているようなポーズをとる。
すると・・・
ほんとにお風呂に入っているような錯覚を覚える。
『ぬるい・・・』
外気があまりにも寒いので、海中が温かく感じる。
冬と言っても、海は、まだ秋である。
水温は、
2か月ほど、外気より遅れている。
1月の海中は、外気でいえば、11月の気温である。
つまりまだ秋。
「お~あたたか~い」
ほっこりする。
しかし、しばらくすると、慣れてきて・・
ぬるい。
お風呂と同じで、いつまでも浸かっていると、
さすがに温まらないので、困ってしまう。
とりあえず手足を温め、
ハァ~~と吐息をはき、
空を飛びゆくカモメに、手をふる。
さあ、仕切り直しだ。
ぬるま湯からあがり、
さらなる寒風にわが身をさらす覚悟を決めるべく、
大きな声をだす。
「青い!」
空なのか、そのあとに「春」をつけるのか、
曖昧にしといて、再び海上の人となるのであった。