「どこで夕飯を喰おうかな?」
腹をすかしていた私がいたのは、大阪の地だった。
っと、ふと・・・
「そうだ、鶴橋(つるはし)に行こう!」
京都を鶴橋に置き換えただけのフレーズが浮かんでくる。
その途端、口いっぱいに唾液が噴き出してきた。
つるはし・・・
パブロフの犬状態である。
鶴橋は、焼き肉の聖地とも呼ばれている。
焼肉好きで、鶴橋を知らないモノはいないと言われている。
最後の晩餐は、鶴橋の焼肉と言い切る猛者までいる。
(ほんとかな)
鶴橋は、ただの駅名なのに、皆が皆、
「おい焼肉食いに、鶴橋行こうぜ」
と誘うものだから、
焼肉屋の名前だと勘違いしている人さえいる。
私もそうだった。
実際、行ってみても、鶴橋屋はないのだが、
あまりの店舗の多さに、どぎもを抜かれる。
焼肉屋以外はないと言っていい。
おそらく一か月間、違う店で焼肉食うことができるだろう。
そして、どこも混んでいる。
混んでいるのだが、従業員のしきりが上手いので、
回転がいい。
ちょっと待てば、すぐに座れる。
座れば、すぐにビールが出され、肉が並べられる。
ジュゥ~~~
目ん玉をまんまるくした私の箸が忙しく動きまわり、
一時も休むことのない口が、喋る時間を惜しんで、
肉をほおばり続けてゆく。
腹八分目ができない町の名前を人はこう呼ぶ。
『つるはし』