
今。水道の蛇口を開けて、水を飲むカラスが話題になっている。
しかし、私が九重山で出会ったカラスはその上をいっていた。
大分県の九重山は九重連山とも言い、
いくつかのピークが連なっている。
すると、ひとつひとつのピークに荷物を担いで登るのは、
効率が悪いってんで、
鞍部(低いところ)にリュックを置いて、
空身でピーク往復をする。
「よっこらしょ」
そのピークの鞍部に、リュックを置いて、登りにかかった。
3分ほど登ったところで、ふと振り返った。
すると、さっきの鞍部にあった高さ1mほどの棒杭に、
カラスがとまっているのが見える。
さらにその向こう、リュックのあたりにもう一匹、
真っ黒い影がうごめいている。
ん・・?
なにかしているゾ・・
慌てて、鞍部に向かって走り下った。
と、その時、棒杭のカラスが、
「カァカァ」と鳴いた。
その途端、リュックで何かをしていたカラスが飛び去ったのである。
鞍部に降りて、そこで目にしたモノは・・・
《リュックのチャックが開けられている》
内部の食料が、いましも引っ張り出されそうになっている。
なんだコレは?
チャックをくちばしで開けられるモノだろうか?
試しに、私がやってみた。
歯で咥えて、引っ張ってみる。
アレッ・・開かない。
引っ張ると、土台の布までもが引っ張られ、うまくいかない。
布を手で押さえ、引っ張ってみる。
しかし、よほどうまく引っ張る方向を考えないと、
まるで動かない。
さほどチャックとは、やっかいなモノだと分かった。
それを、さっきのカラスはほんの短時間でチャックを開け、
中身をぶちまけようとしていた。
さらに奴は、見張りまで立てていたのである。
盗っとカラスの頭脳には、舌を巻く。
以前、ドラマの現場でこの話をしていたら、
後輩の役者に指摘された。
「イシマルさん、チャックじゃなく、
ジッパーですヨ」
そうか・・今は、チャックと言わないのか!
すると、その後ろから若手の役者が口をひらく。
「いえ、それは、
ファスナーです」

宮崎 鵜戸神宮(うとじんぐう)