アナタがネギを刻んでいる。
スーパーで買った万能ねぎという奴だ。
納豆に入れたり、ラーメンに入れたり、鍋に使ったり、
まさに、万能。
トントントントン、
マナ板の上にこんもりとネギの細かい粒がたまった。
さて、
アナタはこのネギをすべて使っていますか?
すべてとは、
一粒残らずという意味だ。
マナ板の上のネギを、包丁で掬いとり、小鉢に移そうとする。
丁寧にやっているのだが、なぜだか幾つぶかがこぼれる。
こぼれて流しなどに落ちたりする。
あるいは手の平にくっついて、どこかに運ばれたりする。
ここで、アナタは、
「ま、いっか・・」
安易な言葉が浮かび、この問題を忘れようとする。
「どうせ、何百分の一だろぅ」
目くじらと立てるほどの事ではないと、
些細な問題を、
長い間たなあげしてきた。
しかし、よくよく考えてみるに、
このような仕打ちを受けているのは、ネギだけである。
「ボクを、全部つかってもらえませんかネェ」
何百分の一かもしれないが、分身である事にはかわりなく、
ネギにはネギの言い分がある。
あまたの料理シーンで、彩りと味のシメを担っているネギ。
それなりの感謝と尊敬をささげてあげなければ、
失礼にあたるというものだ。
それには、
ちょっとだけ丁寧な扱いをするだけで、
事足りるのではないか?
手の平にくっついたネギの小片を、パッパッと払うことなく、
丁寧に小鉢に入れる。
マナ板から逃げたネギのリングを丁寧に拾う。
「すんませんネェ、
いままで捨てられたネギの小片を集めれば、
相当の量になりますわなぁ~」
いずれ、ネギ塚を造らねばならないだろうと、考えている。
お供えには、やっぱ、ポン酢かなあ~
猿の腰かけ