先日、大工の棟梁の話を引用した時のことだった。
「俺たち大工は、九分九厘道具だな」
殆ど道具に頼っているという事を、たとえの表現として、
九分九厘という数字で喋っている。
そこで、私は、ふと固まってしまった。
しばし考え込む。
小数点の話をしてみよう。
1割というのは、全体の10分の1である。
その10分の1が、1分。
さらに10分の1が1厘。
このデンでゆくと・・・
九分九厘と云うのは、1000分の99じゃないのか?
つまり、1割にも満たない数字という事になる。
この算数が正しいとすると、大工の棟梁は、こう述べている。
「俺たち大工は、一割にも足りない部分を、
道具でおぎなっている」
意訳すると、
「ほんのちょっとだけ、道具を使っている」となる。
アレレ・・?
真意が伝わっていないじゃないか?
算数が間違っているのだろうか?
私が首をひねっていると、算数が得意な方が、諭してくれた。
「全体が100という考え方が、間違ってます。
満たんで、10だと考えましょう。
『十分(じゅうぶん)』という言葉がありますネ。
その10を割ってゆくと、九分九厘は、
100分の99になるのです。
つまり、99%です。
ほとんどという意味になります」
ん・・?
ちょっと待っちょくれ。
今、100の考え方をやめたハズなのに、
99%っちゃ、なんやろかい?
「え~ですから、始まりは全部で10だとして、
例えば、九分九厘九毛となれば、
1000分の999になる訳です」
ちぃ~と待っちょくれ・・
なんか数字が増えたなあ~
ワシをごまかそうとしとらんかい?
ワシはな、振り込むような金は持っとらんけんネ。
「いえいえ、ですから、全部出して頂かなくても、
ほんの一厘だけでも・・」
ホラ、やっぱワシをだまそうとしとる。