「3分間、全力で歩いてください!」
スマホが私に呼びかけている。
体力測定のアプリをダウンロードしたのだ。
これを試すことによって、
体力年齢が分かるというのだ。
「3、2、1、スタート!」
女性の声で、道路を歩きだす。
歩き出すと言ったが、ほとんど走る寸前。
アプリの注意事項として、
「走ってはいけない」
「全力で」
つまり、競歩の要領で、腕をふり、足をフリ、
どんどん進む。
しかし・・1分が経過したところで、
この例題がいかに過酷なものかと気づいた。
世の中に、
3分間全力で身体を動かすスポーツが、
あるだろうか?
陸上競技でいえば、もっとも過酷といわれている、
800m走でも、2分ほどの闘いである。
世界一過酷と言われているボクシングは、
ワンラウンド3分だが、クリンチだの、
選手はそれなりに休み時間をつくっている。
ではそんなスポーツはないのか?
私には心当たりがある。
TBSの《スポーツマンNO1》で行われていた、
《クイックマッスル》
地獄の3分間と言われた、腕立て伏せである。
まったく休むことなく、3分間腕立て伏せを続ける。
あまりの苦しさに、終わった後、
しばらく喋ることもできず、うっぷしたままの時間が過ぎる。
この3分間がいかに過酷であるかを、
実況するアナウンサーの方が、説いてくれた。
「私達は、ありとあらゆるスポーツ実況をしておりますが、
かほど苦しい実況はありません。
3分間、全く休まずに喋り続けるのは、無理!
それも機関銃アナウンス!
冒頭で、《地獄の3分間》とうたっているのは、
アナウンサー地獄という意味かもしれません!」
で、このアプリ・・・
1分半が過ぎた頃、吐き気をもよおしてきた。
2分・・この世とおさらばする予感がした。
2分30秒・・・歩いているのか転びそうになっているのか。
10秒前・・・・記憶にない。
しかして、スマホが表示してくれた結果数値。
「あなたは28才です」
試しても構いませんが、アナタの健康の保証はできません