《道まちがい》
《山まちがい》
これまで、経験したまちがいである。
しかし、山登りでは、
もっとユニークなまちがいを犯した人もいる。
先日、谷川岳の肩の小屋に泊まった折り、
小屋番の方に、お話がきけた。
最近の山小屋は、携帯電話で応対しているケースが多い。
ある日、その携帯電話が鳴った。
その日は、今季の小屋は閉鎖されたあとで、
彼は、山をおりており、麓で電話にでた。
「はい、肩の小屋の者ですが」
『予約しているモノですが、小屋が閉まっているんですが』
「はい、今季の小屋は終わりました」
『え~!でも予約しましたヨ』
「いえ、受けておりませんが」
『いや、しました!そちら肩の小屋ですよネ』
「はい、谷川岳の肩の小屋です」
『ほらやっぱり、予約しましたヨ』
「失礼ですが、予約した番号に一度かけてみて下さい」
いったん電話は切れ、しばらくして又かかってきた。
『ごめんなさい、私が予約したのは、北岳の肩の小屋でした』
「っと言いますと?」
『ネットで調べるとき、肩の小屋を調べましたら・・』
「調べたら」
『間違って、
北岳の肩の小屋のページを見て・・』
「南アルプスの北岳ですネ」
『そこを予約してたようです』
で、その後、どうなったか?
秋も深まった時期、野宿する訳にもいかず、
小屋の方の許しをえて、宿泊棟の中に入り込み、
置いてあったビニールの袋を体に巻き付けて、
夜を過ごしたそうである。
今、試しに、《肩の小屋》と検索してみたら、
トップに、
北岳の肩の小屋がでてきた。
そこを、迷わずにクリックしたのだと察せられる。
おっちょこちょいにもほどがある。
日本には、肩の小屋と名のつく山小屋は、たくさんある。
《〇〇肩の小屋》と呼び、〇〇に山の名前が入る。
この方の場合、たとえば、《頂上山荘》を検索すれば、
トップにでてくる中央アルプスの、
《宝剣山荘》を予約してしまうことになる。
他にも、
《木曽駒ヶ岳頂上山荘》、
《赤岳頂上山荘》
《白馬岳頂上山荘》
《石鎚頂上山荘》
《唐松岳頂上山荘》
《御嶽山王滝頂上山荘》
知ってるだけで、こんなにある。
道まちがいは、正せばよい。
山まちがいは、登らなければよい。
しかし、肩の小屋まで来たら、ほとんど遭難である。
良かったねぇ、電話だけは通じて・・・