三浦かるた 《
む》
無人はんばい
おつりは出ない
こぜにを持って
~~~ ~~~ ~~~
《無人販売》
田舎を旅していると、無人販売のコーナーにであう。
置いてあるモノをもらって、お金を箱にいれるシステム。
善意だけで成り立っている。
日本以外では、小さな島でしかお目にかかれない。
私の友人にも、還暦を超えているのに、
いまだ無人販売を利用したことがないという方もいる。
一度利用しようとしたのだが、千円札しかなかったので、
諦めたと証言する。
「いくらのモノを買おうとしたの?」
『キャベツなど、なんやかやで800円』
ほんだら、安いんだから、千円置いていけばいいのに!
彼は、
お釣りをもらうという固定観念にしばられている。
せっかくの楽しみをフイにしたナ。
三浦半島には、あちこちに無人販売の棚がある。
たいがいは、木造りである。
表側がオープンになっており、隅に金属の箱が置かれてあり、
こぜにを入れるシステム。
時折、農家の庭に入らないと、買えない所もある。
よそんちに勝手に入り込むのをためらう方には塀が高い。
「こんにちは」の一言が口から出れば、それでよい。
時には、卵やイチゴの自動販売機もある。
こちらも、こぜにが必要。
お釣りはでない。
「すみませ~ん、両替していただけませんか?」
その販売機を置いてある農家に声をかける方もいる。
すると、縁側から、
『卵なら、ホレ、今売ってあげるヨ』
なにも自動販売機を利用する必要はない。
両替する間に、卵を持ってきた方がはやい。
人気のある無料販売所では、朝、争奪戦が始まる。
朝どれのキャベツを巡ってご近所さんが、
農家の方が、当場所まで運んでくるのを待っている。
だから、朝どれはすぐに売り切れる。
こんなにアッという間に売り切れるなら、
もっとたくさん置いとけばいいのに・・・
と考えるのだが、その気配はない。
「目いっぱい儲けよう」という商売人の考えはない。
畑から分けてくれているだけである。
三浦半島岩礁地帯