
三浦かるた 《や》
野菜とれたて
水がしたたる
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三浦半島の畑の風景は、日本離れしている。
大きな山がないのと、周りを海に囲まれているので、
どこか地中海的な雰囲気が漂っている。
農家の方達の代わりに、イタリア人をアルバイトで雇い、
そこがイタリアだと評して、ドラマ撮影すれば、
イタリアになる。
カメラの手前に、オリーブの樹を美術チームに発注すれば、
完璧だ。
その畑でとれた野菜をもぎたての状態で手にすると、
(実際、手にする機会は多いのだが)
手の平に、水がこぼれでてくる。
ジャ~ではないが、ボトボトくらいは出る。
採れたての野菜は、新聞でくるむと、
昔から決まっているのだが、
それは、新鮮さを保つの意があるのと、
ひょっとすると、
こぼれ出た水を受けてくれる役目も、
あるのかもしれない。
特に、キャベツは水が良く出る。
切り取った切断面から出てくる。
一度、その水をカップで受けて飲んでみた。
やや甘い、
畑の味がした。
『畑の味』とはなんぞやと、問われると困るし、
追及されると逃げ出したくなるのだが、
悪くない味である。
けっして土臭いわけではない。
肥料の味でもない。
文学的にいうところの、太陽の匂いとか、
お日様の味とか、潮騒の香りとかの仲間と思っていただきたい。
(うまく逃げたナ)
だから、最もおいしい食べ方をするなら、
水がしたたる前に、すぐに調理にとりかかれば、よい。
なぜかというと、あのしたたる水に、
旨み成分が含まれているかもしれないからである。
肉でも、上手に解凍しないと、水分がでてくる。
マグロもしかり。
「この出ちまった水にヨ、旨み成分が、たぁんとある」
ねじり鉢巻きの板さんが言っていた覚えがある。
つまり、
畑の味は、旨み成分だったのである。
(うまく逃げおおせたナ)

三浦の岩礁地帯を走破する私↑ と崖の上にいるアリサン↑