
《スタンウエイ&ソン》
ご存知だろうか?
ピアノである。
それが名前なのか、作った人の名前なのかも知らずに、
今、問うている。
お叱りを覚悟に問うている。
ついでに申せば、お叱られるに決まっているが、
まだ、ピアノを触って11カ月の人間が、
そのピアノを4時間、身勝手に弾きまくったのだ。
誰もいなかった。
「どうぞお弾きください」とは言われた。
そこは、ある地方都市のおおきなホテルの、
特設ロビーだった。
広々とした吹き抜けの広間に、
神々しくトップライトを浴びて、
そのピアノは設置されていた。
いわゆるグランドピアノ。
私が知っているピアノの中で、ビヨ~ンと、
長さが最長だった。
ジャイアント馬場のベッドよりも長かった。
(このあたりで、すでに叱られるナ)
触ってみたかった、触れてみたかった。
弾いてみたかった。
こんな感情は、一年前にはなかった。
つまりピアノを弾いた事がない時代には、
感じた事のない衝動だ。
「いったいどんな響きが返ってくるのだろう?」
そんな時だった。
係の人が、「どうぞ」と、薦めてくれた。
歩み寄った。
グランドピアノであるからにして、
フタを開けなければならない。
ヨイショ!
非常に重かった。
か弱い女性では決して挙げられない重量。
しかも片手で支えながら、
つっかえ棒を刺さなければならない。
エンヤさ!
フタだけで、これほどの重量感!
全体の重さやいかに!
トン!?
(このあたりで、もうお叱りは限界に達するかも)
この時、ふと思った。
似たような動きをしたことがあるナ?
ホレ、車のボンネットを開ける動きだ。
ガチャリッ
エンジンルームを確かめるべく、
ボンネットの金属のフタを開ける。
アレとて、相当の重量があるハズ。
ところが、いとも簡単にフタは上にあがってゆく。
そして、そのフタを固定するにも、手で支えることなく、
なんとなく空中に浮いている。
一応念のため、細い金属棒を立てかける。
か弱い女性でも、汗ひとつかかずにやってのけられる。
ええ~~
ピアノに、この便利で簡単な楽々装置はないのか?
もし・・もしもだヨ・・
ピアノのフタを持ち上げている最中に、バタンと落ちたら、
いや落としたら・・
私の指はペチャンコにつぶれるよナ。
ピアニストの指がつぶれるという悲劇の予兆が、
いまそこにある。
(オマエはピアニストじゃないだろう!)
というお叱りの声が聞こえるので、
この続きは又明日に・・・