
フロントでキーを貰って、エレベーターで3階にあがった。
ガチャリッ、部屋に入る。
「な・・なんだコレは!」
畳の部屋が、かなたまで、ビヨ~ンと伸びている。
遠くに布団が敷かれてあり、さらに向こうにテレビがある。
ユトリロの遠近法の絵画を観ているようだ。
これまで、いろんなホテルや旅館にお世話になったが、
これほど極端な比率の部屋は初めてだった。
おそらく大勢の人たちが泊りに来た場合に備えて、
詰めてでも入れる部屋を用意したものと思える。
その夜、異様な長方形の畳部屋のはじっこで、
寝返りをする私がいた。
トイレまで歩いていくのに、
十数歩、歩かなくてはならない。
真っ暗なので、壁を片手で伝うのだが、
やたら長く感じる。
部屋というより、廊下と認識した方がいいかもしれない。
そうか・・廊下に寝ていると考えれば、すっきりする。
普段、我が家でも、台風の時などは、
廊下に寝たりするではないか・・
あの時、結構お気に入りだったじゃないか。
という事でその夜、ぐっすり安眠できたのであった。