
三浦かるた 《
ら》
ラッキーな日
かぼちゃが
道に落ちている
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三浦半島の道には、時折、そんなことがないでもない。
カボチャやキャベツが落ちていないこともない。
一昨年の夏、ものすごい急坂で知られる場所で、
こんな光景に出会った。
その坂にさしかかった時だった。
目の前の坂道が真っ赤にそまっている。
スワッ、殺人事件!
足がすくんでしまった。
ところがよく見たら、赤の中に緑が混じっている。
黒い色も見える。
スイカ・・?
なん十個のスイカが割れて散らばっている。
視線をあげてみると、その先に、
軽トラックが荷台をばらけて止まっているではないか。
この状況が読めてきた。
スイカを運んでいる軽トラックが、この急坂を登り始めた。
悪いことに、
荷台をしっかり閉めていなかった。
重みに耐えかね、荷台の後部板が外れる。
当然、重力に逆らえないたくさんのスイカが転げ落ちる。
パコン、パコ~ン、パッコ~ン。
次々に砕けてゆくスイカ。
慌ててトラックを止めたものの、あっという間に、
すべてのスイカが、地面に激突したのである。
なにが 起きたかを瞬時に知った運転手のオイチャンは、
呆然として、運転席からおりる気力もない。
その直後に、私が通りかかった次第である。
あのコトワザが頭に浮かぶ。
《覆水盆に返らず》
「なすすべもない」とは、
こういう時に使う言葉かもしれない。
やがて、町のひとたちが集まり、掃除が始まった。
すべては、スイカという弱っちい果物のセイである。
アレが、
カボチャだったらどうだったろう?
ドスンドスン、ゴツン!
ゴロゴロゴロ、ドダ~ン!
悲劇は避けられたのではなかろうか・・
多少の傷はついただろうが、
なんとか売り物としての体裁は保ったのではなかろうか?
かるたの
かぼちゃが道に落ちているのが
ラッキーな日、と捉えたのは、
カボチャだから良かったと安堵したのである。
けっして、
「カボチャが落ちてるゾ、拾って帰ろう。
今夜のオカズが助かった。しめしめ・・」
などと、不埒な考えを語っているワケではないのだ。
もしあなたが冒頭で、かるたを読んだ途端に、
「しめしめ」などとの考えが浮かんだとしたら、
中原中也の詩を声を出して読んでいただきたい。
「汚れちまった悲しみに・・」