
「大晦日に、鶴橋で焼き肉をがっつり喰らう!」
一種のイベントである。
二年連続、マイカーが、
鶴橋(つるはし)に向けて、よだれタラタラで向かう。
鶴橋とは、大阪の焼き肉の殿堂地帯である。
狭い範囲になん十軒の焼き肉屋がひしめいている。
たとえ肉を食いたくなくとも、
この町を歩いていれば、肉食い人間に変身してしまう。
街の匂いが、強烈である。
肉が焼ける匂いが恐ろしいほどの香りをぶちまけている。
間違って、鶴橋の駅に下りた人は、
用もないのに、つい焼き肉屋の店に迷い込み、
ついついギトギトの肉を喰らってしまう。
よもや私のように、計画して、遠征して、
わざわざ感あふれて鶴橋にたどり着いた境遇の人は、
完璧な腹ペコで、決死隊のハチマキを巻いているので、
メニューを見ているだけで、
気が狂わんばかりになっている。
ハラミとか、
アカセンとか、
ハチノスとか、
タン元とか、
眼が裏返らんばかりのお品書きを眺めるだけで、
最初の生ビールジョッキが、カラになる。
「何をオカワリしようか?」
メニューばかり眺めている。
名前が書いてあるのに、
どの部位の肉か分からないモノがあったりする。
注文してみる。
『〇〇の部分です』
説明してくれるのだが、他の肉との区別がつかない。
つかないが、とりあえず旨いので、
たちどころに胃袋に収まる。
問題は、やめどころである。
どの段階で、注文に終止符をうつのか、
という問いかけがなされている。
コレは、すし屋での最後を何にするのか、
という葛藤に似ている。
腹八分目という難しい問題がここでも登場する。
よし、これでやめようと決心し、
「すみませ~ん、スープを・・」
と言いかけて、なぜか、
「ギアラください」
と口に出してしまった私だった。

〇〇〇〇と書かれてある肉