
時代劇の撮影をやりながら、ふと疑問が湧いた。
それは、江戸時代の家屋の雨戸を蹴たてて、
外にとび出すシーンだった。
ダアァ~~~ン!
倒れた雨戸を、子細にながめてみると、
何種類かの木の断片でできあがっている。
江戸時代には、ノコギリとカンナはあっただろうが、
電気モーターの製材所はない。
という事は、人の手で、この雨戸が作られた事になる。
どうやって?
仮にこう考えてみよう。
今、アナタに直径40センチの杉の大木を一本進呈しよう。
ノコギリとカンナを使って、雨戸が作れるだろうか?
柱はなんとか切りだせる。
分厚い板なら、時間をかければ、かろうじて作れるだろう。
しかし、雨戸の
表面の薄い板は、どうやって削りだすのだろう?
現実に、その昔には、雨戸はあった。
もちろん、フスマも障子もあった。
欄間の工芸品を見るたびに、手先が器用な人がいるもんだと、
感心していたのだが、
欄間の工作の仕方はなんとなくわかる。
ノミなどで、削るのだと理解できる。
しかし、薄い板はどうやって作ったのだろう?
雨戸がない現代で、想像するのが難しいのなら、
天井板はどうだろう?
杉や松で作られており、薄さは3ミリ~5ミリ。
仮に厚かったとしても、1センチに満たない。
幅は、30~40センチはあろう。
長さは30センチ~1m以上。
いったん直方体に切り出したモノを、
いちいちカンナで削っていたとすると、
非常に無駄な削りぶしが出るに違いない。
一部屋の天井だけで、どれくらいの木材が必要か?
「おい、戸板(といた)持ってきやがれ!」
時代劇で水死体が出た時に、かける言葉なのだが、
実は、江戸時代の戸板(あまど)は、重かったのではないか?
薄い板制作が困難だとすると、
やや厚い板が主流だったのではないか?
当然、重くなる。
「雨戸くっといて頂戴ネ」
その昔、母親に言われて、雨戸繰りをしたものだが、
子供が片手で、カラカラと動くものではなく、
もっと、大変な仕事だったのではないか?
という事は、時代劇で、ダアァ~ンと雨戸を蹴立てられた時、
それを刀で跳ねのけるのではなく、
よけられず、余りの重みに、
下敷きになる侍がいても不思議ではない。
「戸板を持ってこい」と言われたとき、
いつも2人で運んでいたが、
その上に生身の人間を乗せるのであるからして、
4人の人間で、持ち運ぶべきだと考えられる。
日本家屋は、実は、非常に重い家屋であったのか!

石のゴリラ