
雪山のかなりの傾斜になった個所に遭遇する。
滑り落ちたら、危険だ。
単独以外では、このやり方で進む。
《アンザイレン》
それぞれが、ロープで結びあうのである。
腰のあたりに、ハーネスという安全バンドを巻き、
それに、カラビナとい金属のワッカをぶらさげる。
そこに、ロープを通し結ぶ。
もし万一、片方が滑り落ちたら、もう一方が、
グッと力を入れて、持ちこたえるという単純な確保方法だ。
もちろんピッケル(金属の杖)を持っているので、
それを雪に突き刺し、さらなる確保体制をとる。
二人以上のパーティであれば、全員がその体制をとり合う。
さて、ここで、もっと困難な状況が現れた時の話をしよう。
岩山の稜線で、一方がどちらかの谷に滑落した場合だ。
「うわぁ~!」
両側が切りたった稜線を進んでいる時、
前を歩く者が、右側に谷に落ちてしまった。
それを察した後ろを歩く者はどうしたらいい?
さきほどの、グッと力をこめたくらいでは、
フリー落下する人間の重みは耐えられない。
グッという止め方は、とっさの時には役にたたない。
むしろ二人一緒に落ちてしまう。
いま、まさに彼は落ち続けている。
彼と自分の間のロープの長さは6m・・・
考える余裕は、ゼロコンマ何秒しかない。
どうする?
こたえ~
彼が落ちた側と反対の谷に、身を投げるのである。
彼が右側に落ちたなら左側。
自分の体重で、滑落を止めるのだ。
苦肉の策と言ってもいい。
しかし昔から、
最終的にはこの方法でお互いを助け合う、
という信頼をむすんでいた。
とはいえ、とっさに崖から断崖に身を投げ出せるだろうか?
100mを超す断崖かもしれない。
1000mかもしれない。
ロープが切れれば、一巻の終わり。
ということで、昔から登山部などでは、
訓練として、この飛び降りを、安全なところでやっていた。
私がやったワケではないが、
他の隊がやるのを、間近で見ていた。
「ふ~ん、ああやるのか・・・」
とっさに身体が動くようにするのが訓練である。
いいかえれば、
究極の訓練をやっていれば、そこまででない試練は、
乗り越えられるだろうという、
人の幅をつくろうとしている。
アナタが、授業や職場で、
「なぜこんな理不尽事をやらされるのだろう?」
と感じたら、ひょっとすると、
アナタの幅をひろげようとしているのかもしれない。

5人づつのアンザイレン(先頭と最後尾にコーチ)