ちょいと遠征釣りに出ますかぁ~
九十九里の片貝漁港から、釣り船が出航する。
4人の釣り人を乗せて、太平洋を東に向けて走り出す。
全速力でぶっとばす。
かなり走ったところで、はるか前方に、
大型貨物船見えてくる。
だんだんそれに近づき、やがて並び、追い越してゆく。
しばらくしてふり返ると、船影がしだいに小さくなる。
そして、波の間に間に、見えたり見えなかったり・・
はっと気づくと、房総半島自体が見えない。
空は晴れて、空気も澄み視界良好というのに、
海以外何も見えない。
つまり、日本国がどこにあるのか定かでなくなった。
もし、太陽がサンサンと照っているのでなければ、
東西南北が分からなくなる。
潮の流れさえ、まったく分からない。
かろうじて、今日は西風が吹くとの予想だったので、
「ああ~あっちが西だな」との判断ができる。
高校の理科でならった《大陸棚》は過ぎたようだ。
たしか大陸棚は水深が、200mだと、
地理の山本先生に教えてもらった。
しかし、今、水深は500を超えている。
どうやら、深海の断崖のフチまで来てしまったようだ。
そして、船長は、ここに釣り糸を垂れヨと命じている。
スカイツリーの展望台より高いところから、
地上に向かって、糸を垂れるに等しい。
重りを落とすだけで、10分ほどかかる。
することがないので、360度グルリ四方を眺めてみたが、
海水以外なにもない。
外洋の波が、ありとあらゆる方から押し寄せ、
船は、お山のてっぺんに登ったり、谷底に落ちたり。
ミッドウエーはどの方角だろうか?
そして、ふと頭に浮かぶ・・・
「しまった・・パスポートを持ってこなくてよかったのか?」