
アナタに聞いてみたい。
ティラノサウルスが数頭つらなり、
チーターの2倍以上の速さで走ってくる。
そのすぐ横に、立っていられますか?
そんな経験をたまにすることがある。
東海道新幹線の《のぞみ》にしか乗らない方には、
理解できないだろうが、
のぞみの停まらない駅、たとえば、三島駅だとか、
豊橋駅だとかのホームに、アナタが立っているとしよう。
そこに、のぞみが走ってくる。
遥か彼方に、点のように見えていた白いものが、
次の瞬間に、ホームの端っこに、
まるでティラノサウルスのような巨体となって現れる。
チーターは時速100キロと言われるが、
こやつは、時速270キロである。
自分のからだと、2mしか離れていない所を、
爆走してゆく。
間に、つい立てがなかったら、とても平然といられない。
ソレが、
ティラノサウルスでないと理解しているから、
ジッとしていられる。
16両のティラノが、2秒で過ぎた。
号車番号を読もうと試みたが、無理だった。
乗客の顔を見ようとしたが、
人がいるかどうかも判明しなかった。
あまりの衝撃に、2分ほどボーゼンとしていたら・・
目の隅に、再びソレがやってきた。
ティラノである。
判で押したように、爆音をけたてて2秒でいなくなった。
そして、やっと我に返って、ある事実に気づいたのである。
「いつも私は、あのティラノに乗っているのか!」
月に何度も、ティラノに乗り、新聞を読んだり、
茹で卵を喰らったり、
あげくに眠ったりしているのか!
本来なら、ティラノに乗っている方が、恐ろしいハズなのに、
それを眺めている人間の方が、畏れている。
新幹線の偉大さを知りたければ、
のぞみの停まらない駅を利用している方たちに、
訊ねてみるがいいだろう。