雪の中を、和かんじきで歩いている。
このかんじきは、岩手のマタギの方から頂いたモノだ。
(もってけ)
とばかりに、私に向かって差し出されたかんじき。
久々に、言葉少ない方に出会った。
木の枝をクルリと楕円形に曲げ、結び、
木のこっぺんで歯をとびださせ、
雪にくい込むようにしている。
(こっちにこい)とばかり手招きされ、ついてゆくと、
雪の上で、つけ方を教えていただいた。
和かんじきの長所は、とにかく軽いことだ。
最近は、スノシュー(洋かんじき)が主流になっているが、
そっちは、まだ少し重い。
たとえば、アイゼンを履いたり、かんじきを履いたりと、
雪の状態によって履き替えねばならない時、
スノーシューをリュックの上に乗せると、やはり重い。
重いし、かさ張る。
先日も、和かんじきを履いて、雪山を登っていた。
すると、向こうからやってきた若い女性3人組が、
奇声をあげた。
「キャ~、かんじき履いてるぅ~初めて見たぁ~!」
嬉しいような、恥ずかしいような表現をされた。
こんな時いっそ、私の風体が、
髭もじゃで、肩から箕のをかぶっており、
「ワシャな・・」
などと話始めれば、もっと大うけになるのだろうが、
若ぶっているオジサンには、その度量がない。
さらに演出を加えるとすると・・・
懐から、キセルを取り出して、一服たてれば、
完璧である。
喋る言葉は、故郷の大分弁。
「あんたんとこの大分は、雪ふらんじゃろうが」
とのご指摘はさておき・・・