
《低温蒸し》
調理法のひとつである。
中華の蒸籠蒸し器を思い浮かべれば分かりやすい。
セイロの最上部においてある篭には、下部の篭に比べて、
温度が下がった水蒸気が届く。
60度くらいの熱気で、蒸される。
すると、素材が柔らかく仕上がる。
蒸し鳥が柔らかいのはこの為だ。
以前から、温度計を利用して、
低温蒸しをやっていたのだが、
常に、蒸し器のそばにつきっきりで、
温度加減を気にかけてやらねばならなかった。
それも40分!
そんな時、先日のテレ呑みで、
スギヤマ隊員が食っているローストビーフがやたら気になった。
これみよがしに見せびらかしているソレが実に旨そうに見えた。
《低温蒸し器》で拵えたのだと自慢している。
自分の料理の腕を自慢するのなら理解できるが、
蒸し器を自慢している。
銀色のマシンを取り出し、カメラ目線で、
ああだこうだと画面の中で動き回っている。
その闊達な動きは、まるで、
通販のオジサンそっくりである。
最後に値段を発表するに至っては、
《まわしもの》なる言葉が、ちらついたほどだ。
「なんと!」
という接頭語が付けていないお値段発表は許せた。
私は、(縮めて)「通オジ」の説得力に負けた。
すぐに買い求めた。
300gのビーフも買ってきた。
55度の設定で、2時間かかると言う。
うぅ・・・思ったより時間がかかる。
待つ間、腹筋、背筋、腕立て、懸垂、スクワット、
ふくらはぎスクワット、バランスボール・・・
2サイクルもすると、大汗をかく。
風呂に入る。
さらなる大汗が出る。
よし、空腹という準備は整った。
取りだした肉塊をフライパンで、表面を焦がす。
マナイタの上で、スライスしていく。
いや、スライスという言葉には、敏感に反応する。
普段立食パーティなどで、
うすい薄いローストビーフを押し頂いているので、
その恨みをはらすべく、スライスはやめ、厚めに切る。
思い切って
幅2センチに挑もうとしたのだが、
その思い切りは、将来に取っておくことにした。
何事も徐々にが楽しい。
幅7ミリ、はじめは、これでよしとしよう。
ザックリ
おお~なんというなまめかしい色艶。
完璧に火はとおっているにも拘わらず、若々しいピンク色。
ワサビだけで、食べてみる。
う~~~む
通オジのお勧めに騙されてみて良かった。