《富士五湖》
富士山の周りには五つの湖がある。
東から、「山中湖」「河口湖」「西湖」「精進湖」「本栖湖」
これで全部かと言われると、実は、もうひとつ、
「幻の湖」と呼ばれるモノがある。
それは、精進湖と本栖湖の間に、ある。
『昔々その昔、富士山の北側に、
せのうみと呼ばれる大きな湖があったそうじゃ。
貞観(じょうがん)の噴火864年によって、
その湖に火山流がながれこみ、
青木ヶ原の富士樹海の元ができたんど。
湖は、西湖と精進湖と本栖湖に分断されたんじゃ。
じゃから、それらは地下で繋がっちょるもんじゃけ、
水位が同じなんじゃヨ。
ところがじゃ、10年か20年にいっぺん大雨が降り続くとな、
赤池と呼ばれる場所に、その名も、
「赤池」が現れるんじゃ』
爺様のおしゃべりで、語ってみたが、ご理解できただろうか?
前回いつできたのか定かでないのだが、
今年の雨はおそらく赤池の出現に、み合う雨量を示している。
それというのも、例年通っている本栖湖の水位が、
ここ20年の間で最も高くなっている。
2~3mほども高い。
川が流れこまない湖の水位がこれほど上がるのは、珍しい。
25mプールで云えば、
なん百なん千杯ほどの量の水が溜まったのだろうか?
確かに連日、雨は降っていた。
しかし、九州と比べれば、少雨と言えるかもしれない。
熊本や大分のケタ外れの豪雨を考えると・・・
火は恐ろしいが、水も恐れ多い。
特に水で遊ぶスポーツをやっている者からすれば、
その脅威は常々理解しているつもりだが、
近年の水の暴れ方は、人の常識を超えている。
柔道の体重別選手権で、60キロ級の選手が、
突然100キロ超級とあたるような感覚がある。
勝てるワケがない。
柔道の場合は逃げればよいが、
自然相手は逃げる間もなく襲ってくるのでたちが悪い。
自分で自分の認識を変えるしかない。
「まあ、いいだろう」
が通用しない世界がやってきた感がある。
山では、よくこういう事が言われる。
「
大勢でいると、危険意識が薄くなる」
今、天候が急変し、大変危険な状況に陥っているにも拘らず、
一人二人なら、避難したハズなのに、大勢でいる場合、
「なんか、大丈夫なんじゃない」
という雰囲気に包まれてしまい、
逃げるタイミングを失うのである。
「どうか命だけは」という報道を聞いたら、
自分に言われているのだと、戒めようと考えている。
雪舟の絵画 「沈堕の滝」 大分県豊後大野