雨飾山(あまかざりやま)の麓に、池があった。
《鎌池》かまいけ
あるようでないような変わった名前の池
なぜ鎌なのか?
とりもなおさず、向かった。
きちんとした観光地になっている。
茶店もトイレもある。
一周40分と書かれてある。
ハイキングスタイルで歩き出した。
落ち葉の道が登り降りしながら、池の周りを取り巻いている。
幸いというか誰一人出会わなかったので、
クモの巣対策として、落ちた木の枝を振り回しながら進む。
樹のトンネルをくぐってゆくと・・
ズボッ
池のほとりにとび出た。
思わずため息が漏れる。
風がわずかしか吹いていない。
さざ波がたたない。
湖面が鏡のように静まり、
対岸の森をそのまま映し出している。
いや、そのままではない。
湖面に映った方が、クリアな色合いをしている。
写真をいじったのではないかと疑惑が湧きそうな色合いだ。
なぜ、鏡のような水に映ると、美しさは倍加するのだろう?
スチール写真家が、
元々美人だった人を、明かりを当てたり、
紗をかけたり加工して、さらに美しく見せようとするアレ。
あの効果が、湖面の水の能力に含まれているらしい。
それが証拠に、180度上下ひっくりかえして見てみると、
明らかに、湖面に映った方がキレイだ。
美人の中にも微かに潜むアバタを消している。
美人の方が、ひそかに気にしている部分を削除している。
まるで、最近のプリクラ加工写真の、
自然界バージョンと云えよう。
そうか!
あの場所に人物を立たせて、
写真を撮ってみればよかったのか!
実像と虚像。
どうなったか、実験の価値はあるな。
鎌池をぐるっと回って理解した。
その名は、池が
鎌の形をしていたのだった。
合成写真のような鎌池