
アレの名前は何というのだろう?
山の頂上に行くと、周りの山並みを見渡せる場所に、
石などで拵えた、方位を教える台座がある。
それを真上から見ると、丸い円形の真ん中が、
今の自分がいる所であり、360度の方角を書いてある。
そして、グルリととり囲んだ山々の名前を、
レリーフよろしく描き込んでいる。
この台座石の名前は、何と呼ぶのだろう?
これまで、山頂にたどり着いた時には、
必ずといってよいほど、この石の周りを皆で囲んだ。
「ほぉ~あっちが富士山かぁ~見えないけど」
「とすると、あの山が、焼山だな」
皆で口々に声に出し、方角を指さす。
っと、ここまではいい。
問題は、その前である。
「おお~い、こっちにあるゾォ~」
その石を見つけた私が声を出している。
出しながら、その名前を言えない事実に驚いている。
何という名で呼べばいいのだろう?
正式名があるのだろうか?
山の案内本などには、様々な名前で書いてあったりする。
「方位盤」
「風景指示盤」
「石標」
「案内石標」
「案内石」
他にもありそうだ・・
う~~む、どれだろう?
「方位盤」とは方位を表わすのだから、
山の名前までは書かなくてよい。
「石」と名の付くモノは、石柱ともとれ、
頂上標識と混同される。
この5つの中では、「風景指示盤」が正解に近い・・?
しかし、こう呼ぶだろうか?
「お~い、風景指示盤があったゾォ~」
周りでこの言葉を聞いた登山者の耳には、
違和感が残るような気がする。
白馬岳(しろうまだけ)2932mの山頂に、
この石がある。
新田次郎の処女作《強力伝》に登場した、
187キロもある大理石だ。
富士山の強力、小宮山正がその役をおおせつかった。
あまりにも重いので、3つに分けて、大雪渓から担ぎ登った。
現在その石は、頂上に据えられている。
しかし、我々が辿りつき、丸い上部を眺めてみても、
長い間の風雪にさらされたセイか、
文字や方角指示がよく読めない。
遠い昔の強力の苦難を知らない人も増えてきた。
よく読めない石が、ちょうど高さといい都合が良いらしく、
写真を撮る台座替わりに使っている。
新田次郎さんが聞いたら、
あの世でコブシを握りしめることだろう。
で、その石を私は、皆の意見の集大成として、
今のところ、こう呼ぶことにした・
《山頂方位盤》

小宮山正 白馬大雪渓で担ぐ
(冒頭で滝田くんが立っている大理石)