猫舌人間が、コロッケで悶絶する。コロッケは、揚げたてが旨いと、
食堂やファミリーレストランでもノボリに書いてある。
その通りだと思っている。
先日、高速道路のパーキングの買い食いコーナーで、
コロッケを見つけた。
一個買い求めた。
すると、ご丁寧に電子レンジでチンをしてくれた。
押しいただき、すぐに車に戻ってパクついた。
ウワァ~~~!
もの凄く熱い。
すぐになんとかしようとした。
たとえば熱いお茶を口にした時、危ないほど熱かったら、
見た目や礼儀などふっとんで、口から吐き出してしまう。
ゴボゴボとテーブルの上にこぼす。
そうでもしなければ、瞬時の熱さに耐えられない。
やけどを負ってしまう。
その経験を元に、吐きだそうとした。
しかし、コロッケは口から出てこない。
なぜ?
コロッケの材料は、ほとんどがジャガイモ。
丁寧につぶされ捏ねられ、ペースト状になっている。
それらがレンジで加熱されると、もの凄く熱い粘土となる。
コレをガブリとやるとどうなる?
歯や歯茎の間に、こってりとペーストが入り込む。
吐きだそうにも、出ていかない。
アツアツアツ・・悶絶が始まる。
こんな時、普段であれば、出動部隊として待機している奴がいる。
舌だ。
舌は、口内に入ってきた異物を察知するや、
その物体にとびかかり、クネクネして排除しようとする。
こちらが命令していないのに、かってに仕事をしてくれる。
かなりの良い奴なのだ。
その仕事ぶりは、歯医者にいくと顕著に発揮されている。
「は~い、ちょっと削りますからねぇ~」
医者のマシンがキリキリ音をたてる横で、
助手の女性が棒のような吸引機でコーコーやっている。
この時、医者のくりだすマシンに、
おもいっきりアタックをかけているのは我が舌だ。
「アッチいけ!触るな!ソッチいけ!」
私がやめろと、命令しているにも関わらず、アタックを続ける。
口内の異物の排除という労働に惜しみなく尽くしてくれている。
治療する側としては、邪魔でしょうがない。
そこで、助手の女性の吸引機の棒が役にたつ。。
棒で舌の攻撃をブロックしているのである。
「ん・・アレ、この棒のやろう、邪魔だな・・」
我が舌は抗う。
舌の役割は、とても献身的だ。
ところが・・・今現在。
コロッケが入ってきた途端、どこかに逃げてしまった。
まるで仕事中に、
ぷいっと休憩に行ってしまったバイト君のようだ。
こんな時こそ、活躍して、
熱いネチョネチョを掻き出してほしいのに、
隅で縮こまっている。
ズルい。
はあはあはあ~
しばし時間がたつと、なんとかやり過ごすことができた。
それでも小さなヤケドを負ったかもしれない。
一部が欠けたコロッケからは、もはや湯気は出ていない。
よおし、もう大丈夫だろう。
なぜか猫舌の人間は反省をしない。
ふたたび、かぶりつく。
ギャア~~~~
チンの威力はすさまじかった。
まだまだ残熱をキープしていた。
アチアチアチアチちちちい
舌はどこへ行ったのかと、援助を希望すると、
またしても、バイト君は休憩に走っていたのである。