《シンクロ》というテレビの業界用語が分かるだろうか?
映像と喋っている言葉が、同時に取れる状態を指す。
現在は、ほとんどシンクロである。
シンクロでないモノを探す方が難しい。
では、旅番組で、シンクロでなかった時代のモノは何?
《兼高かおる世界の旅》
世界旅行の先駆けとなったこの番組は、
本人の兼高かおるさんが、世界中を旅し、
その映像を流しながら、キャスターの男性と解説をする。
このあまたある魅力的な映像に惹かれ、パスポートを取得し、
日本をとびだした人たちが大勢いた。
それからしばらくした頃、
日本テレビが作った旅番組
《ごちそうさま》
高島忠雄夫妻がスタジオでタクトを振り、
日本中のありとあらゆる地域に、
今で言うところの、レポーターを送り出した。
それに選ばれたのが、当時37歳の役者、石丸であった。
なぜ、選ばれたのか?
本人は、未だに分かっていない。
食べ方がキレイだったのか?
毎週どこに連れて行っても、文句を言わない人だと、
思われたのか?
好き嫌いがまったくない役者だと、信頼されたのか?
4年ほどの間に、日本全国津々浦々ありとあらゆる所に行った。
200軒以上のお店で食べさせてもらった。
目玉のとび出すほどの値段の高い店から、
大衆酒場まで、食べまくった。
私はグルメだと思われているが、決してそうではない。
ただの食いしん坊である。
おっと、そう云えば、当時、
お昼の番組が、《ごちそうさま》であり、
夜の番組が、《食いしん坊万歳》であった。
その《ごちそうさま》は、始まった当時は、
シンクロではなかった。
兼高かおる世界の旅と同じく、映像をフィルムで撮影し、
旅人がソレに解説をするスタイルだった。
つまり兼高さんを模倣したと言える。
進化した模倣と言っていいだろう。
そして、私がキャスティングされた頃には、
シンクロになった。
ビデオカメラで撮りながら、同禄するのである。
今では当たり前の撮影方法。
ただし!
ビデオカメラの撮影時間が、10分あるかないか!
喋っている最中に、NGノーグッドを出そうものなら、
「フイルムチェンジ!」の声がとぶ。
(フィルムじゃないのにナ)の私の声は無視される。
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