南の島を歩いていたら、道端の家の入り口に・・・狛犬ならぬ、《狛猫》が鎮座していた。
真っ白な猫が、左右対称に近いかたちで、こちらを見ていた。
たまたまこういう配置になったのか?
毎日、こういう仕様になっているのか?
人為的なおしつけ配置はなかったのか?
だとしても、完璧すぎる狛猫である。
そもそも狛猫(こまねこ)などという言葉はない。
この時、初めてひらめいたに過ぎない。
ひょっとすると遥か昔に、このような様を見た人が、
狛犬という発想を得たのかもしれない。
猫より、犬のほうが従順だとの思い付きで、猫は却下され犬を配置した。
「おすわり」を覚えられる犬を配置した。
ただし、犬は落ち着きがない。
誰かが通りかかれば、ワンと言い。
誰かが、頭をなでれば、ついてゆく。
食い物を投げれば、ホイホイと喰らうし、
門柱に小便をひりたくる。
「しまった猫にしとけばよかった」
反省してももう遅い。
犬は狛犬としての実権を握ってしまっていた。
では、もし狛犬が狛猫だったらどうだろう?
「おすわり」を覚えない猫である。
プイッと居なくなったら、そのまま。
エサに釣られるのは犬以上かもしれない。
そもそも二匹が揃って同じ場所にいるなど、稀有かもしれない。
毎日餌付けでもするか、あったかい装置を床に設置するかの、
だましをしなければ、狛猫状態は続けられないだろう。
と云うようなことを考えながらその場を離れようとした時だった。
横の窓からジッと目線を送ってくるヤツがいた。
母猫だろうか?
顔が良く似ている。
(似ているというのは適格性に欠けたかもしれない)
猫の顔に似ているも似てないもないだろう。
その母親らしき猫は、瞬きもせずにコチラを見ていた。
あまりにも、動かないのでヌイグルミなのかとさえ勘ぐった。
ひょっとすると、彼女(完全にメスだと思い込んでいる)が、
息子たち(オスだと思い込んでいる)をあそこに配置したのかもしれない。
それ以前は、自分がそこ(狛猫場所)に居たのである。
自分の兄弟らと、狛猫を演じていたのである。
いまは引退して窓猫になり余生を楽しみ、おそとを眺めている。
ニャ~