連日、イノシシの肉を「ああでもないこうでもない」と引きちぎって、食いあさっている。
和風より、イタリアン風が向いているという所にしばらく落ち着いていた。
オリーブオイルとニンニクに良く合うと結論ずけようとしていた。
そんな時、ふと、アレを忘れていることに気づいた。
中華
世界三大料理のひとつを忘れてはイカンじゃないか。
ってんで、思いついたのは四川料理、麻婆豆腐だ!
なんの脈略もなく思い浮かんだ、麻婆にイノシシを登場願う事にした。
麻婆豆腐には通常、挽肉が入れられる。
その代わりに、今日はイノシシの肉が参加させられる。
ほい、冷蔵庫から引っ張り出された肉塊を、細かく刻む。
いったん解凍された肉は刻みにくい。
ぶにょぶにょしていて、研いで鋭くなった包丁の切っ先から、
逃げてゆく。
特にスジは、逃げまどう。
ゴシゴシ鋭い刃先で切ろうとしても、なかなか切れない。
スジの硬さには、感動すら覚える。
我らが、《ヒザじん帯の損傷》などと、
外科医の大畠先生に診断されるとき、
それは、スジが伸びたり、切れた時である。
包丁でさえ、簡単に切れないスジがブツリと切れるのだから、
スポーツにおける激しさやいかに!
ジャ~~ン
フライパンに放り込まれた肉とタマネギ、
そこに真っ白な豆腐がお邪魔して、色合いがなまめかしい。
「え~とぉ、何本にしようかな?」
悩んでいるのは、トウガラシの本数である。
2本刻もうか?
それとも3本いっちゃう?
悩んだあげく、4本刻むことにする。
なんたって、イノシシが辛さを中和するハズである。
トウガラシは魚介類に投入すると、激しく辛さを主張するが、
肉類だと、その辛さは、半減する。
これまでの料理つくりの経験から、そう判断した。
特に、イノシシの脂の甘さを考えれば、さらにもう一本!
5本いっちゃえ~~!
この考え方は、間違ってはいなかったのだが、
ただ一点だけ、欠落していた。
このメニューをお店で注文すると、
豆腐と挽肉をスプーンですくって食べる。
あまり噛まなくとも、すぐに飲み込める。
ところがイノシシの肉だと、噛んで噛んで噛みまくる喰い方をする。
そこに、刻みトウガラシ5本!
できた!
ガブリッ
おお~~旨いではないか!
はい・・その直後、イノシシの鼻息に匹敵すべく、
号砲ならぬ悲鳴が噴きだしたのだった。
ふんぎゃあああぁぁぁ~~~