墨絵「山小屋の生ビール」
私が普段飲むモノの中に、特殊な飲み方をしているモノに気づいた。《ビール》
えっ、何が特殊なのかといぶかるアナタに問いたい。
アナタはビールを口のどこで飲んでいますか?
「ビールはのど越しだヨ!」
「水は、あんな量は飲めないよネ」
ビールに関しては、皆一過言ある。
「ビールのない人生なんて!」
人生のコダワリの筆頭に持ってくる人さえいる。
最近、右の奥歯が痛む。
たぶん、歯の知覚過敏。
痛むというより、しみる。
冷たいモノは勿論、熱いモノでもしみる。
だから、冷たい飲み物は、ゴクゴクとはいかない。
左側に寄せながら、チビチビ飲んでいる。
なさけない。
そんな時、晩酌にキンキンに冷えたビールを、
カポカポとグラスに注ぎ、泡に見入りながら、口元に持ってくる。
しみるのならば、ここで戸惑うハズ。
ところが、ビールの場合、なぜか、グイッと流し込む。
温度的には、かなり冷たい部類。
なぜ、しみないのか?
同じ飲み方を水でしてみたのだが、
いや~しみるのなんの!
すぐに吐き出してしまった。
今、同じ飲み方と言ったが、ほんとに同じだろうか?
もう一回、ビールをグイッとやる。
この時、ビールの口内滞在時間が、非常に少ない事実がわかった。
口元に入るやいなや、口内のホホの裏にさえ触らずに、
喉にいっきに流している。
では舌はどうしているかと云えば、歯の上にドデ~ンと横たわり、
動かないでいる。
言い換えれば、歯をブロックしていると考えられる。
「ビールはのど越し」と言われる様が、そこで行われていた。
牛乳やジュースのように、口の中でクチュクチュだの、
モグモグだのという味わい方をしていない。
通過時間短縮の、特急列車さながらである。
東海新幹線の《のぞみ》である。
東北新幹線の《はやぶさ》である。
今お茶を飲んでいるのだが、お茶も口に入れると、
いったん口を閉じ、あらためてゴクンと飲み込む。
ところが、ビールは、口を閉じる前に飲み込んでいる。
理解しにくいアナタに説明しよう。
生ビールのジョッキをアナタが飲んでいるとしよう。
一口ではなく、ゴクゴクゴクと3回やったとしよう。
アナタは最初のゴクのあと、口は閉じていない。
あけたまま、次のゴクをやっているのだ。
ある意味、かなり器用な嚥下をしている。
んなバカなと思ったのなら、いますぐ台所に行き、
カップに入れた水を飲んでみよう。
口を開けたまま飲んでみよう。
失敗すると肺に入るかもしれず、流しに吐き出す用意をしながら、
飲んでみよう。
どうです?
簡単ではなかったでしょう。
その飲み方を、ビールではしている。
誰に教わった訳ではないのに、ビールに特化して、
その飲み方を獲得した。
よって、歯にしみないのである。
ま、ビールを飲めない方には、「なんのこっちゃ」という話しでした。