ピッピッピッ画面を触っているのは、寿司屋である。
以前は、回転と呼ばれていた寿司屋。
今では、列車が寿司を運んでくる寿司屋。
システムはよく分からないが、リニアっぽく寿司を運んでくる。
注文は、すべて画面を触り、ピッピッピッ。
先日、昼飯に、ツッシーと寿司と相なった。
ツッシーとは、20年来のウインドの仲間である。
愛称をツッシーと呼んでいるのだが、
いざ、本名をフルネームで書けと言われると自信がない。
そんなツッシーと寿司屋の椅子に座っている。
訪れた寿司屋の注文は、すべて画面を触る。
スマホを触っている方には、いとも簡単な手段に過ぎない。
初めて触っても、ほぼ間違いなく注文できる。
うまいシステムを作ったもんだ。
私の注文は、偏っている。
光物・・サバだのアジだの、ブリだのカンパチだの、
アオモノだのだのを、ピッピッピッ!
そして、決定を押して、注文を、ピッっと送ろうとした。
ん・・・?
確定するのは、どこをピッとやればいいのだろう?
動きが止まってしまった。
「ねぇねぇツッシー、注文を送るのはどこを押せばいいのかな?」
長年仕事で、コンピュータ関係に従事しているツッシーにきく。
「この四文字の漢字の奴を押せばいいのかな?」
非常に小さい文字で漢字が四つ書いてある部分を指さした。
隣で同じく画面を操作しているツッシーが応えてくれる。
『あ~それは中国語なので、違います』
違いますと言われた私は、その後も、注文する箇所が見つからず、
右往左往する。
そして我らは、恥ずかしながらという文字を再び使うことになる。
先ほど、ツッシーが「中国語」と呼んだ部分が、
注文するのに正しい場所だったのである。
そこには、こう書いてある。
《注文確定》
う~~む、コレを中国語と読み、私に、
「コレは無視しろ」と指摘し、あろうことか、
自分も注文をできないで、ウロウロしているのである。
ツッシーの名誉の為に言っておくが、我が家のパソコンだの、
ファクスだのプリンターだのを、チョチョイのチョイと治す人である。
ところが、だれでも簡単にできる寿司屋の注文に手間取っている。
《医者の不養生》に似た言葉はないものかと、
甘酸っぱい生姜を口にしながら、見ていた。
その時気づいたのだが、列車に乗ってやってくる注文の品が、
私とツッシーでは全く違うということだ。
光物一辺倒の私に対して、ツッシーの列車には、ホタテだの、
あぶりエンガワだの、どちらかと云えば、白いモノが主流。
つまり、青VS白。
ふたりで寿司を食べる場合、いろんな種類を食べたいので、
皿に二かん乗ってくるモノを二人でシェアすれば、いいのだが、
どうやらツッシーとは、できない協力態勢だと分かった。
お互いそう思っているらしく、お互いの列車に関心を示さず、
淡々と列車の到着を待つ時間がすぎてゆく。
中国語でなかった痛みだけを、ガリの酢味に噛みしめながら・・
カンパチのカンパチ