ブツッ突然、テレビが音を消した。
映像は流れているのだが、音が消えた。
慌てて、音量調節を動かす。
数字表示は、動くのだが、音は出ない。
全く音のないテレビとなった。
一応、あがいた。
アレをいじり、コレを触り、出来る事はなんでもやってみた。
主電源を切ったり、音声コードを抜いたり繋いだり、
昔からの伝統的な、叩きの修理法も試した。
しかし、テレビは沈黙したままだった。
ウンともスともとは、こういう時に使う言葉かもしれない。
「修理はこちらに」という電話番号を見つけた。
ピポパ・・プルルル・・
「ただいま電話が非常に混雑しております。
このままお待ちになるか、時間を置いてあらためて・・」
アナウンスが流れる。
おそらく、あらためても再び同じアナウンスが流れるだけだ。
このまま待つことにした。
10分・・20分・・
すると、スマホがぶるぶると震え出した。
誰かから、何かが届いた知らせである。
迷ったあげく、そっちを優先した。
結果、ふりだしに戻ってしまった。
世の中じゅうから掛かってくる電話に対応しているのだろう。
いくら回線を増やし、人を配置しても、
すぐさま対応など出来ようはずがない。
それ以来、ずっとそのままである。
朝、習慣的に、テレビのスイッチをリモコンで入れる。
画面が現れるのだが、静かである。
生活が静かである。
静かなのはありがたいのだが、ニュースを見たい。
しかたない。
静けさをそのまま受け入れている。
っと、今朝、工事人の方が来てくれると連絡があった。
あのあと、忍従の果てに、電話がオペレーターに繋がったのだ。
工事の方が、あれこれと試している。
それでも埒があかない。
そして、私にひとこと。
「テレビの電源コンセントを抜いてください」
『主電源を切るのではなく?』
「コンセントを抜くのです」
抜いた。
で、また差した。
すると・・・音が出はじめたではないか!
工事人の方が言うには、テレビが自覚したのだそうだ。
自分を更新したという表現もした。
そうだったのか・・・すべてやったと思っていたが、
なんということか、原点を忘れていた。
『コンセントを抜く!』