~~昨日の続き~~さて、我らは、雪が降った数日後に岩場にとりついた。
岩場の手前までは雪はなかった。
股峠というところで、呼びかける。
「お~いアイゼンをつけよう」
最近は、残雪などでは、チェーンアイゼンを多用している。
ゴムで簡単に登山靴に装着できるので、手軽だし、軽い。
気温が低い時は、その歯が雪にしっかり刺さり、滑る心配がない。
ザクザクと高度をかせいでゆく。
しかし、足元は大丈夫だが、手で掴む岩が雪に埋もれている。
岩に付いた雪をかき落としながら、登ってゆく。
「ん・・ここはなんだ?」
トラバース気味に鎖場にきた。
クサリを掴みながら登るのだが、
からだが崖から外に膨らんで進まざるを得ない。
下は見たくないほど、切り立っている。
クライミング的には、さほどの難易度ではないのだが、
なんせ命綱は今はない。
ないうえに、足を載せるべく箇所が無い場所が現れた。
進退きわまった・・・
ところが・・
よくよく見ると、金属の人工物が設置されている。
さすがに足を置くべき所がないと、乗り越えられないと、
誰かが判断したようだ。
あるいは、この場所で落っこちた方がおられたのかもしれない。
グレード的な話をすると、
クサリとこの金属フットがあるだけで、
11Aから、9にまでグレードは下がる。
(分かる人だけ分かってください)
この先は、クサリ場が続くも、それは濡れている。
夏には素手もしくは、グリップの良い手袋で登るのだが、
気温0度では、厚手の手袋なので、グリップが心もとない。
そして登りながら考えている。
雪の付いた斜度60度の崖は、登れるが、降りるのは、困難である。
途中で進退窮まった時に、戻れるかどうか考えている。
なんやかや・・・
双耳峰の西岳の頂上に辿りついた。
しかし、手が使えない縦走は中止した。
滑れば落ちるだけというリスクはおかせない。
下りは、登りの倍の時間をかけ、岩をなだめるように降りてきた。
帰りの車の中で、意見は一致した。
「雪のない時期にふたたび来ましょう」