
最近、私ごときが私に驚いている。
私にもし、能力があるとすれば、《方向感覚》かもしれない。
仲間と山に登ることが多い。
毎週のように山に登り、歩き回る。
地図もコンパスも持っているのだが、ソレに頼ることは殆どない。
理由は、どこに居ても常に、東西南北が分かる。
晴れていれば、お日様の位置で東西南北は、知れるのだが、
私の場合、雲っていても、突然ガスが出ても、目指す方角が分かる。
なぜ分かるのかは、自分でも説明できない。
できないのだが、コレは当たり前だと、ずっと思っていた。
ところが最近、山の中で同行者に方角を訊いても、
うまく指し示せない人が多数いて、驚いたのである。
「東はどっち?」
こんな簡単な質問に、答えられない同行者がいるとは、
信じられなかった。
この驚きが続いたあげく、自分のことを振り返ったのである。
《方向感覚》
もしこれが、優れた能力であるならば、その能力の限界を知りたい。
限界とは、
1:夜でも分かるのか?
2:地下街でも分かるのか?
3:洞窟でも分かるのか?
答えを言おう。
1の、夜は分かる。
地方町の繁華街で、食事をしたあとに、
たとえ酒で酔っていても歩いて帰る事ができる。
できるのだが、30年ほど前、こんな事もあった。
アレは、神戸だった。
舞台公演が終わって、タクシーでホテルに帰る。
そのままタクシーで夜の町に繰り出した。
なんやかや・・・夜中の1時頃、帰り始めたのだが、
なんとなく歩きたくなった。
結果からいうと、2時間ほど夜中に歩きホテルに帰った。
月は出ていなかった。
あとで思い出すと、最短距離を歩いてホテルに帰りついたようだ。
この例題のように、夜はよく歩いている。
夜の暗闇の方向感覚は、きちんと出来ているらしい。
では、地下街はどうだろうか?
東京と大阪には地下街が広がっている。
何度も通った地下なら、分かるのは当たり前。
こういう検証をしてみよう。
・地下街に地上から入る場合
この場合は、すでに地上の東西南北を把握した状態でもぐり込む。
すると、私のナビが地上の感覚のまま働き、地下に降りても、
正常に働いている。
中で曲がり、くねり、回れ~右しても、方角は分かる。
いちいち、「どっちが出口ですかぁ~」の質問に答える必要もない。
・地下鉄から地下街に来た場合
地下鉄の降り方をきちんとした場合には、迷うことはない。
「降り方をきちんと」を理解してもらうのは、難しい。
電車の中で居眠りしようが、本を読んでいようが関係ない。
問題は、電車から降りるときである。
降りてすぐの時に、駅の案内地図を見ることがある。
行きたい場所を地図で確かめようとする。
あの地図は、北が北を指していない。
その地図を見ていると、自分の中の地図方角がズレてくるのである。
マイナビが狂いはじめる。
面白いことに、地上の地図では、この現象が起こらない。
地下で、それも地下鉄から降りて、地図を見た時に、
《錯覚現象》が起こる。
・3:洞窟の中でも分かるのか?
正直に言おう。
分からない。
観光洞のような照明がキラキラしている所なら分かるが、
自然の洞窟、つまりヘッドランプで侵入する探検洞窟では、
入洞して、10分もすると、頭の上に、
ハテナのクエスチョンマークが浮かぶ。
東がとっちか分からない。
分からないが、入口に戻れと言われれば、戻れるかもしれない。
その程度の、方向感覚人間になってしまう。
よもや、1時間以上、クネクネ洞窟内を這い回った場合、
まったくの方向音痴になる。
私の尊敬する洞窟探検家の吉田勝次さんの言によれば、
「方角が分からなければ、生きて帰れないでしょ」
と、いとも簡単な正説を落された。
以上の検証により、私の方向感覚は、
まだまだ発展途上にあると示されたのである。
(この感覚はいずれ又検証してみよう)

富士風穴内にもぐる