「ロウソクはどこにありますか?」問いかけると、答えが返ってくる。
「所定の場所に置いてあります」
「では、火をつけるライターは?」
「え~と、どこかに、いや引き出しに確かあります」
「ほんとにありますか?」
このあたりで、目が上向いてしまう。
何かの時の明りに、懐中電灯が必需品であるのだが、
長い目で見ると、ロウソクの存在は大きい。
LEDとはいえ、懐中電灯に使われる電池の寿命は短い。
家じゅうの電池をかき集めても、
ロウソク数本分の明りを照らせないだろう。
人差し指ほどの太さのロウソクでも、数時間灯り続ける。
30本入りのロウソク箱があれば、一か月の明りを約束される。
しかし、その傍に、マッチもしくはライターが無ければ、
ただの蝋の棒にすぎない。
窓のサッシが滑る為に塗るしか役にたたない。
実は、その昔、ロウソクは明かりの助け以上に、「滑り」に貢献していた。
家屋の障子やフスマを滑らせる為に、ミゾにロウソクを塗った。
ゴシゴシ塗ると、不思議にそれらは滑るようになる。
テーブルや椅子の足の裏に塗ることもあった。
ズラす時に、床が擦れないようにする為だ。
ロウソクを塗る役目は子供たちが仰せつかった。
滑りが面白く感じる子供は、喜んで塗りまくった。
すると、どうなる?
必然、塗る場所が次第になくなる。
なくなっても、まだ塗りたい気持ちだけが残る。
仕方ないので、廊下に塗りたくったりする。
その後に、靴下で走り回ると、スケート場のように滑るようになる。
面白いので、家じゅうの床板という床板に塗りまくる。
ロウソクを塗ったあと、布で擦るとさらに滑る事が分かり、磨き上げる。
畳以外、すべすべのスケート場と化す。
夕方、父親が帰ってきて、廊下ですってんころりん。
おこらん事か、おこらん事か!

岐阜県 珊瑚洞