彼は、これまで勝つシュミレーションを散々してきたハズだ。その上、勝ったあとのシュミレーションすらしてきたハズだ。
そして彼は勝った。
その世界の頂点に立った。
そこに立てば、おのずとその直後にインタビューがあり、
表彰式があり、ありとあらゆるものが用意されている。
ゴルファーならば、誰もが知っている作業といっていい。
ゴルフを始めた多くの若者たちは想像を膨らませる。
いつかそこに立つ自分、何を喋るか、どんな振る舞いをするかを、
想像しながら、日々、クラブを振っている。
クラブハウスでキャディのアルバイトをしながら、
明日を夢見る若者は、毎年催されるマスターズの最終シーンを、
テレビ録画して、「オレだったら・・・」
ドライバーを叩いているのである。
まだ、なんの実績も残していないのに、地球の裏側で行われている、
インタビューのセリフだけはつぶやいているのである。
松山英樹のインタビューの初々しさを目の当たりにしながら、
明日を夢見る若者は、自分だったら、こう言おう、こう振る舞おう、
世界最高の舞台の栄光にいる自分を想像し、
そこから逆算して、日々アイアンを振っている。
グリーンジャケットの着こなし方、背筋の伸ばし方、
英語の話し方、すべてを自分なりに貫く準備を、
パターの練習に込めている。
夢の作り方に、まわりくどい変化球はない。
直球と、自分の想像力が生み出した最終形だけが支えとなる。
夢とは・・・
こうやって成り立っている。
・・・どの世界でも。