
最近はまっているのは、《ナンコツ煮》である。
沖縄で昔から食べられているナンコツを煮込んだモノだ。
《バラナンコツ》という言われ方もしている。
ということは、バラとはあばら骨の事であり、
それをグツグツ煮込めと、エイサーの太鼓をたたいている。
よし、作ろう。
私の場合、やみくもに造り始める。
誰かに造り方を訊くという選択肢はない。
そもそも、それを作ろうと家で考えたのではない。
スーパーの肉売り場で、
《ナンコツ》と書かれた魅力あふれる肉塊を見つけたに過ぎない。
その場でジッと見つめ続ける私。
頭の中では、様々な料理法が渦巻き、どうやったらコレを、
いつか見た沖縄のナンコツ料理に仕上げられるか?
ずっと考え続けている。
どのくらいの時間、肉売り場のナンコツの前に立っていただろうか?
スーパーの防犯カメラを巻き戻し、早送りすれば、
一人の怪しい男の周りを多くの人たちが高速で動き回る間、
まったく身動きをしないその男が、やには・・・
パックに入れられた肉塊を次々に、
カゴに取り込む映像を観ることになる。
とり込みながらその男は、視線を空に向け、ボ~としている時間もある。
あの顔は、肉を窃盗しようした時の反省の顔ではなく、
ナンコツ料理のできあがりを、ウフフと夢見る顔だと知れる。
ハッと気づくと、腕に抱えたカゴの中には、
6パックのナンコツが揺れている。
1パックに、4本のあばら骨の塊がある。
「全部で何人前だろう?」
今更ながらの反省のような心の声が聞こえる。
ところが、料金を払う頃には、
「ド~ンと来い!」・・太っ腹になっている。
しかして、個人のウチとしては大量のナンコツの煮込みを、
造ることになった。
同時に私が買い求めたのは、沖縄の焼酎である。
サトウキビから造られた焼酎に目をつけた。
日本料理の基本は、日本酒を使って料理を造る。
料理とはその土地の酒が、手助けをしている。
となれば、ナンコツには沖縄の焼酎が欠かせない。
ドボドボドボ・・
本来、呑むべきモノが、鍋に投入される。
おっと、その前に、肉塊を大きなズンドウたっぷりの水で煮る。
3時間煮た。
アクと脂を丁寧にすくった。
そのお湯を、全部捨てた。
捨てるのは勇気がいった。
その後、先ほどのドボドボが始まる。
・・・・・なんやかや・・・・
出来たモノが、目の前にある。
何もつけず、箸でつまみ口にいれる。
・・・ほお~。
おそらく成功と言っていい。
人様に自信を持ってお出しできる料理と言いたい。
特に、ヒザに問題を抱えた方が、お酒のつまみに食べてくれれば、
泣いて喜び、おかわり必死となるお味で御座いますぅ~