半世紀前、東京に出てきた頃、行きたかった場所があった。《NHKの一般公開場所》
そこでは、あの録音が聞くことができると知ったからだ。
「まえはたガンパレ!」
オリンピックの実況として有名になった例の放送である。
時は、第二次世界大戦の前、ベルリンで催されたオリンピックの、
女子水泳200m決勝。
その前のオリンピックで銀メダルだった前畑選手が、
国民の期待を背負って出場した。
当時のプレッシャーとは、どれほどのモノだったろう?
「楽しみます」というような現代の空気は全くない。
高校の頃にテレビから流れた、その実況にいたく感動した私。
東京の地を踏むや、それが聞ける場所を知った。
渋谷にあるNHKに向かう。
だれでも入れる管内に、それが設置されていた。
お願いすれば、聞けた。
なんども聞いた。
なんど聞いても、涙がでてきた。
その後、なんどか通った。
その頃は、アナウンサーの実況に感動していたのである。
ところが、しばらくして、前畑選手の歴史を知るにつれ、
なぜ、あの実況がなされたのか?
あれは偶然ではなかった事に気づく。
先日のマスターズゴルフでの、
小笠原アナウンサーの55秒の沈黙とて、
やはり選手との間の歴史がつくりあげたモノで、
決して偶然ではない。
《なるべきしてなった》
ん・・・?
あの実況視聴サービスは、NHKにまだあるのだろうか?
行ってみようかな・・・