この写真、潜水艦のようなモノが写っているが、どこで何の写真か分かるだろうか?
答えは、大分駅に付属するホテルの最上階の露天風呂。
21階にあるので、地上から70mほどになる。
温泉県大分と名乗るだけあって、もちろん温泉である。
潜水艦の船橋のように見えるのは、NHK大分局の建物。
このあたりでは最も高いソレとほぼ同じ高さの風呂となる。
つまり覗かれる心配はない。
後ろに見えているのは、
野生の猿で有名な高崎山(たかさきやま)と、別府の山々。
この時間、九重連山の方角から夕陽を受け始めている。
つまり本格的な夕陽を眺めながらの、
天上露天風呂を味わっている。
では北に目を転じてみよう。
別府湾と国東半島が一望。この日は風が強く、身体はあったかいのに頭は涼しい。
優れたロケーションは、ホテルに泊まった人だけのモノではない。
料金さえ払えば、だれでも入ることができる。
列車の乗り継ぎで温泉につかる、という楽しみな時間をもてる。
駅に露天風呂温泉を作ろうというのは、大分県らしい発想だ。
いまだ新幹線が通っていない、ゆっくりの大分にあって、
豊かさを、違う形で与えようとしている。
考えてみれば、この駅から列車に乗って15分、
距離にして12キロのところに、世界冠たる温泉地、別府がある。
掘れば湯が出る、掘らなくても湯が溢れてくる温泉地。
下水道に余分な湯が流され、つねにアチコチから湯気があがる。
別府で生まれ育った私は、その昔には豊かさにマヒしていたのだが、
離れてみると、その素晴らしさにあらためて驚く。
各家庭にまで引かれた温泉という贅沢。
一日に3回も入るという人たち。
昼休みに温泉につかるサラリーマン。
それほど温泉を満喫していながら、
なぜか旅行先に、温泉場を選ぶ人たち。
その別府を眺める駅のてっぺんに、露天風呂をこしらえる発想は、
奇をてらったわけではないという意味が解っていただけただろうか。
単に、温泉が好きだったのである。
温泉とは、いつもそこにあると大好きになるようです。