《敬文舎》 けいぶんしゃ出版社である。
今ネットで、けいぶんしゃと検索すると、出てくるのは、
啓文社がずらりと出てくる。たぶん大きな会社なのだろう。
その隙間に、控えめに登場するのが、《敬文舎》。
《舎》の字が《社》でないのが珍しい。
石丸謙二郎の《山は登ってみなけりゃ分からない》
を出版した舎である。
この敬文舎から出された非常にユニークな写真集がある。
《野菜の花 写真館》 植松國雄 敬文舎
手に取り、開いてみて驚いた。
野菜に花が咲くのは知っていたが、
こんな美しい花だったのか!
しかも、花の写真をただ写しているのではない。
どの花にも、もれなく蝶や昆虫がとんできて写り込んでいる。
いったいどうやって撮ったのだろうか?
それを想像するだけで楽しい時間が過ぎる。
今冷蔵庫にある野菜すべての写真が、見られる。
八百屋にある野菜すべてと言っていい。
いや、カタカナの知らない野菜の花すらある。
普段は野菜の花など気にしていなかったのだが、
あらためて写真集で見せられると、野菜の花は美しい。
そりゃそうだろう、長い年月をかけて品種改良してきた、
最終形なのだから。
花が美しくなければ、蝶や昆虫だって見向きもしないだろう。
そうなると受粉もしづらいのだし。
しかしながら、それにしても一緒に移っているモデルのような、
蝶や昆虫たちは、どこからやってきてくれて、
どうやって撮ったのだろうか?
たった一枚でも信じられないのに、物凄い数の野菜の花たちと、
今のところ脇役の、虫たち。
動物写真のコマーシャルのように、虫タレントがいる筈もなく、
撮りたい時に、必ずやってきてくれるとも思えない奴ら。
この気も遠くなる撮影を敢行したカメラマンの、
植松國雄さんとは、何者だろうか?