サバである。青々とし、銀色に光っている。
いかにも旨そうに目に映る。
よぉ~く見ると、何かが変?
そう、小さいのである。
写真のモノは、体長6センチしかない。
いわゆる小サバ。
このサバは、海の岸壁で釣り上げた。
この時期、小サバが岸近くに棲んでいる。
大きな魚から難を逃れる為と、
岸近くに食い物が豊富だという理由だ。
もうちょっと大きくなれば、外海に出てゆく。
こんな小さなサバが、大量に群れをなしている。
竿にテグスをつけ、擬餌針を投げれば、
鈴なりに釣れあがる。
サバの鯉のぼり状態となる。
ところで、《テグス》という糸が釣り道具にある。
このテグスは何語か知ってる?
日本語?英語?何語?
さっき、ある本を読んでいた。
《わんぱく天国》 佐藤さとる著 ゴブリン書房
2016年発行
最近の発行であるが、実はそれまでも、
何度か改定して出されていた。
佐藤さとるは、児童文学などの、
ファンタジー文学の第一人者である。
彼が少年時代を過ごした神奈川県の、
横須賀の当時(戦前)を描いている。
その中に、凧をつくる時の糸を採る様子が描かれていた。
なんでも、《やままゆ蛾》の幼虫の腹を裂いて、スジを取り出し、
酢につけて引き延ばすと、「本てんぐす」ができると言う。
この地方では、「てんぐす」と訛る。
漢字で書くと、《天蚕糸》(てんぐす)となる。
しかし、蚕(かいこ)の絹糸とは違う。
絹糸より、軽くて柔らかく萌黄色をしているらしい。
当時の子供たちは、そのテングスを採っていた。
つまり、テグスとは日本語だったのだ。
少々説明不足であるが、たまたまこの本を読んでいた時に、
テグスでサバを釣っていたので、ハタとおでこを叩いたのである。
(私はテグスは外来英語だと思っていた)
釣りを盛んにやる人は、テグスが何語か、
知っておられるのだろうか?
そして、この《わんぱく天国》は傑作である。
昔の子供の遊びを、たくさん蘇らせてくれている。
久々に、懐かしくも切ないお話しに出会った。