竹トンボを作ったことがありますか?ありますかと問うた私は、もちろんある。
小学生の頃の話だが、コツがあった。
竹トンボを作るには、小刀がいる。
当時、「肥後の守」と銘うたれた銀色の小刀が売られていた。
家に一本、置かれてあった。
子供にも、自由に使ってよいと許されていた。
まず、竹を取りに行く所から始まる。
竹は乾燥してしまうと硬くなり、加工がむつかしくなる。
そこで、大きな直径の竹を切り出しに行く。
生竹は、ノコギリでいとも簡単に切れる。
たとえ直径が10センチであっても、すぐに切れる。
ジャッコ、ジャッコ、ジャッコ、
切り倒したモノから、フシとフシの間を切りだす。
次に縦に裂き、長さ16センチほど切り出す。
さらにそれを直方体に整える。
巾2センチ、長さ16センチ、厚さ8ミリの竹が、
目の前にある。
ここからが難しい。
アナタはこう考えていないだろうか?
両側を斜めに削っていく。
つまり、扇風機のハネのように、斜めにすれば、
回転した時に、上昇してゆく・・・と。
はい、それはそれで正しい。
ただし、それでは、高くあがっていかない。
せいぜい3~4mあがって、落ちてくる。
アナタは、高さ10m以上高くあがる竹トンボを、
見た事があるだろうか?
それも小さな子供が作った竹トンボ。
それはハネの作り方に秘密がある。
ヘリコプターはなぜハネが廻ると、上昇するのでしょう。
「ハネが斜めに付けられているから」
と答えたアナタは、パイロットになれない。
「扇風機と同じじゃないのか」とクチを尖らせた方も、
パイロット試験に落ちる。
仮に扇風機にもの凄い回転をさせたら、
後ろに下がっていくでしょうか?
否である。
ヘリには、《揚力》ようりょく という科学理論が関わっている。
良く知っている揚力は飛行機の翼で発生している。
飛行機の翼の断面を思い浮かべてみよう。
底辺より上部が丸く盛り上がった形状をしている。
すると、下部を過ぎる空気より、上部を過ぎる空気の方が速くなり、
結果、ハネ自体が上部に浮くチカラが生じる。
これが、揚力だ。
実はヘリコプターのハネもこの形状をしている。
だから重い機体を浮かせられる。
さて、この揚力を竹トンボにも応用する。
ただ斜めにカットするのではなく、回る方向の先端を丸く膨らませ、
下部を真っ直ぐにする。
飛行機のハネと同じ形状にする。
これを小刀一本で拵えるのは、カンタンではない。
しかも、薄くすればするほど、回転の初速があがる。
ドラッグ(風の抵抗)が減るからである。
最後に真ん中に穴をあけ、ヒゴの竹を通し固定する。
さあ、広い場所に行ってやってみよう。
驚くほどの高さまで上昇する竹トンボを見てみませんか?
10メートル?・・・いえいえ、20メートル?・・いえいえ・・・
