先日、釣りのテグスの話をした。その時に、釣りの写真を眺めていたら、コレがあった。
《ウキ》
名前の通り、水面に浮いているモノである。
ウキを使って魚を釣ったことのある方なら、
ウキを見ている間のしびれるような期待感が理解できるだろう。
じっとしていたウキが、ピクピク微妙な動きをした瞬間、
心臓の鼓動の数値がはねあがる。
たぶん倍くらいになる。
よもや、水中にグイッと引き込まれなどしようものなら、
血圧もあがり、呼吸も激しくなる。
たかが、数ミリグラムのウキに、ドキドキしている。
世の中に、ドキドキするものが数多あるが、
最高のドキドキ大賞を与えるとすると、やはりウキではないか?
岩壁から目の前の海面に釣り糸をたらし、ウキをつけている。
ウキから下、3mほどの深さの所に、エサのついた釣り針がある。
エサをつついている魚の動きが、ウキの様子で分かる。
ツンツン
ここで、ドキドキが始まる。
ツン
次にちょっと大きめの引きが来て、竿と立てようかと構える。
もうしばらく我慢していると、突然、
それまで黄色の鮮やかなウキだったものが、
水中にグングン沈み込んでゆく。
黄色が暗い黄色に変わる。
思わず竿をグイッと立てるや、竿は弓なりに曲がり、
ここから魚とのやりとりが始まる。
全く目に見えない海中を走り回る魚。
何の魚なのかすら分からない。
「おお~やっとウキが海中から出てきた!」
このやり取りの末、大きなメバルがあがってくる。
おまえだったのか・・ウキを使って我がこころを躍らせ、
さして強くない心臓に早鐘を打たせたのは!
ウキごときに一喜一憂している自分が嬉しい。
たかがウキに、人生の一部を捧げている自分が、たのもしい。
「ウキが引き込まれる」というフレーズに、
今日あった憂さをすべて忘れさせるチカラがある。
浮くから《ウキ》と名付けたのだろうが、古の釣り人たちの、
言葉感覚に感謝したい。