山の上の標高の高い場所に、小さな池がある。 《池塘》 ちとう
と呼ばれている。
回りに木が生えていない湿地帯の草原に、
ポツンと池がある。
開けている場所なので、水面に青空だの、遠くの山だのが映る。
美しい!
誰がどうカメラを構えても、かなりのレベルの写真が撮れる。
それもひとつや二つでなく、無数に池塘が点在している。
専門家に聞いた話では、その昔の日本では、
平地にも池塘があったらしい。
しかし、湿地自体が嫌われ、次々に埋め立てられ、
宅地などに変わっていった歴史があった。
その結果、池塘は山の中だけに残ったのである。
そして、登山者の目にしかとまらなくなった。
それも、雪のたくさん降る北国の山にしか見られない。
さて、先週の山カフェで、池塘をとりあげた。
その時、池塘の漢字をどう表現するかで頭を悩ませた。
なんたってラジオである。
言葉だけで、伝えなければならない。
本番前に、スタッフとアイデアを出し合った。
「チは池をこう呼ぶでいいよネ、水源地とか言うし」
『問題は、塘の漢字ですネ』
「土へんに、映画〈唐獅子ぼたん〉のカラはどうだい?」
『石丸さん、それ古いかも』
「中国の唐の時代の、トウってのは?」
『一瞬で漢字が思い浮かびませんでした』
「カラアゲの唐はどうだい?」
『あれって、カタカナじゃないんですか?』
「トウヘンボク!」
『なんですって!?』
「いや、唐変木の、トウはどうだろう?」
『よけい、わかりません(漢字があるの?)』
「あっ、コレがあった。唐辛子のとう」
『あまり漢字で書きませんネ』
「ふ~~~ん」
『日本の地名でありませんか?』
「そうか・・・唐津焼(からつやき)の唐という漢字」
『・・・まあ、いいですかネェ・・・』
っということで、本番はこうなった。
「チトウの漢字は、チは池という漢字、
トウは、唐津焼の唐(から)という漢字でトウと読む」
やや強引なきらいがあったが、佐賀県の、
唐津焼の知名度にかけた。
心のどこかに、唐獅子ぼたんを引きずりながら・・・

苗場山山頂の池塘