体操競技を観ていて、不思議に思うことがある。跳馬、吊り輪、平行棒、鉄棒、床、鞍馬。
6種目ある中で、よく理解できない種目がひとつある。
《鞍馬》 あんば
鞍馬だけ、なぜあんな事をしなければならないのだろうか?
体操競技とは、生活の中から派生した動きと捉えてみた。
ひとつづつ検証してみよう。
《跳馬》とは、何かを跳び越える動きである。
跳ぶときに腕を使って跳ぶ。
塀を超えたり、ベンチを超えたり、家の中でも椅子を超えたり、
超える動作をたくさんしている。
《鉄棒》とは、木にぶら下がる自然な動きだ。
ぶら下がりが好きな人類には当たり前の行為である。
《平行棒》とは、ぶら下がっている人が遊びを覚えたのである。
たとえば、椅子に座っている人が、腕置きを両手で掴んで、
グッとからだを持ち上げ、腹筋で足をあげたりする。
それは平行棒である。
たとえば、洗濯ものを干す前に、並んだ棒をゾウキンで拭く。
片方を拭きながら、もう一本を掴んでいたりする。
力のかけ方は、まさに平行棒そのもの。
《吊り輪》とは、ぶらんこの立ち漕ぎである。
ユラユラと揺れる捉えどころのないロープを掴み、
おもいっきり漕いでゆく。
こんな危ないモノもない。
しかし、小学生でもやっている。
気持ち的には、吊り輪の練習である。
《床》とは、赤ん坊がハイハイを始めたら、それは床運動の開始。
学校の体育館の床に、手をついて座ったり立ったりは床運動。
アナタが床を拭き掃除しているのは、
床運動のさいたるモノである。
特に、両手でゾウキンを押さえてそのまま前に進んでゆく時に、
前にでんぐり周りをしたくなったら、それは床競技をしたがっている。
そこで、《鞍馬》を考察してみよう。
アレは何だろうか?
あの動きに近い何かをしているだろうか?
足を決して地面につけずに、両手だけをついて、
グルグル回ったり、足を放りあげたり、移動したり・・・
たとえば、野原に丸太が落ちていたとして、
その上で鞍馬みたいな事をしたくなるだろうか?
たとえば、アイロン台を見た途端、
鞍馬の動きを思いつくだろうか?
つまりこう考えてみよう。
体操競技の中で鞍馬以外のモノは、アナタの周りで、
なにか似た動きをしているモノばかり。
ところが、鞍馬だけは、どこからの発想か想像ができない。
おそらく、体操を極めた人たちの中で、とびぬけたお調子者が、
突然始めた未来の演技だったのではないか?
あるいは・・・
サーカスの馬のショウーでは、サークルの中をグルグル回る馬に、
跳び乗っては、すぐに降りるという芸がある。
あの動きは、鞍馬に似ている。
足をふりあげ、グルリと回して降りてくる。
言葉も《馬の鞍》とそのまま。
語源はコレでしょうと決めつけたくなる。
しかし、サーカスとて、体操の鞍馬を見て、
勉強したのかもしれない。
まさか、鞍馬の始まりには、本物の馬の上で、
やっていたのだろうか?
そりゃ、馬は迷惑だったろうなぁ~
(あたま、蹴るなよ~ヒヒン)