《たゆたえども沈まず》 原田マハ著
ゴッホの生き様を、弟のテオと日本人の画商の目を通じて描いた、
小説である。
あるとき、人はゴッホに夢中になる。
私ももれなく夢中になった。
高校時代、下宿の部屋に、図書館から借りてきたゴッホの画集を、
広げて、ずっと眺めている時間があった。
その頃、油絵を描いていた。
ゴッホの靴の絵をマネて、バイオリンを同じ構図で描いてみた。
「才能がないな」と筆を置いた。
そして、《たゆたえど沈まず》を読み進めるうちに、
あるページの一点で、目が止まった。
そこには、こう書かれてあった。
「テオは、ボン・ヌフ(新橋)にたどりついた」
この文章に接するや、このコーナーの10数年前に舞い戻った。
《立ち食いポンヌッフ》 2006年5月23日
東京の新橋駅の高架下にある立ち食い蕎麦屋の名前に、
《ポンヌッフ》を見つけた話を書いている。
ハテナマークが浮かんだのは、名前の違和感だったのだが、
アレは、地名をフランス語に訳しただけだったのである。
《ポンヌッフ》と。
むしろフランス人が、新橋にやってきて、
そこに水の流れる川がないことに、違和感を感ずるのではないか。
ポン(橋)はあるのに、川がないじゃないの、メルシーボク?
ゴッホの《星降る夜》と題する、セーヌ川の絵は、
ポンヌフから描かれたのだろうか、
描かれた夜空に北斗七星が浮かんでいる。
新橋駅のガード下 ヌッフとリアル読みしている