《雨飾山》 あまかざりやま 1963m深田久弥の日本百名山のひとつ。
長野県と新潟県の県境にあり、日本海の風と湿気を、
めいっぱい受けるので、いつも曇り、雨ばかり降っている。
そのセイで有り難くない名前を付けられている。
登山者は、登りたいと願うものの、
晴れに当たる確率が弱いので、レインウエアに身を包み、
背を丸めて登っている。
頂上からの眺めに至っては、悲しい結果で撮った写真は、
頂上を表す標識ばかり・・・
さあ、そんな時、テレビの撮影場所に、雨飾山が選ばれた。
ただでさえ今年は雨続きで、撮影班は、
他の山でも雨にたたられていた。
顔合わせで、スタッフと話をした折、
「ボクは、晴れ男なんです」
私の言葉に、皆がしらけた反応をする。
それはそうだろう。晴れ男と自称する男の言葉など、
信じられるハズがない。よもや・・
「ボクは、究極の晴れ男なんです。必ず晴れます」
追い足す言葉に、スタッフに失笑が漏れる。
「ロケで傘をさしたことがありません」
もはや妄信する男のざれごとに、首をかしげるばかり。
「テレビが雨予報を出していても晴れます」
「はいはい、それでは衣装を着てみましょう」
会話は打ち切られた。
さて、ロケ本番の前夜には、屋根瓦がしっとり濡れそぼり、
もはや雨確実の予報の中、
日にちの関係でロケ敢行するしかない状況。
撮影隊は粛々と、登山口に向かう。
車のワイパーが動きっぱなし。
歩き始めは、真夜中の3時。
足元は前日の雨でグチョグチョ。
ヘッドライトに照らされる輪っかに雨粒が落ちてくる。
レインウエアに身を包むスタッフ。
そこになぜかレインウエアを着ていない私。
暑いからという理由もあるが・・その時誰かが大きな声を出す。
「星が出てるヨ!」
見上げれば、下弦の月と共に、秋の星座が輝いている。
やがて急坂をウンショウンショとあえぐ事3時間。
夜が明けてくると、真っ青な空がひろがったのである。
山頂に辿りついてみると、近隣の山はもちろん、
北アルプスの端から端まですべてがくっきりと見える。
よくよく見れば、戸隠山のかなたに、小さな富士山も!
「究極の晴れ男」などとほざいていた変人を、
スタッフが、信じられない目で見ている。
「ホントだったんだ・・・」
誰一人信じていなかった異常現象に感嘆の声を隠せない。
「明日晴れるよ」、ではなく、
「ボクが行くと晴れるよ」、と言う人間がいるんだと知った。
撮影は理想的に進んだ。
こんな現象が、ずっと続いている。
一度、この現象に出会ったスタッフは、
少しだけ私の言葉を信じるようになる。
いや、信じてみたくなる。
晴れるのが、大希望なのだから。
よもや、2度も3度もこの現象に出会った人は、
次の時には、私の言葉を疑わなくなる。
出発の朝、雨が降っていたとしても平気で車を走らせる。
そして、カンカン照りの場所に到着するのである。
さらに、不思議なことに、ロケが終わると、
待ってましたとばかり水滴がポツポツ落ちてくる。
最後に・・・
《雨飾山》とは雨ばかりで暗い印象があるハズなのに、
声に出してみると、さほど暗い響きがない。
その理由は、母音が明るい「あ」行ばかりだからである。
《あまかざりやま》
(ああああいああ)
いま試しに声を出してみたアナタが好きである。

南峰より北峰をのぞむ