《会津駒ケ岳》 あいづこまがたけ 2133m福島県の桧枝岐村(ひのえまたむら)に登山口がある。
深田久弥の日本百名山のひとつ。
アクセスが遠い。
都内から向かうと、えんこらしょと運転をしなければならない。
それでも、行ってみたい山として、とっておいた。
その近くの山といえば、尾瀬の燧岳(ひうちだけ)、
至仏山(しぶつさん)。
どうしても、そっちから登り始める。
ところが—―
「山は登ってみなけりゃ分からない」
紅葉の真っ盛りまで、あと二週間という中秋の満月の日、
雲一つない真っ青な空のした、
あまりもの美しい山登りとなった。
ひとことで言えば、
《池塘(ちとう)》と《草モミジ》
池塘とは、山の上に在る小さな池。
雨水が溜まるだけの湿地の池。
高層湿原とも呼ばれ、雪深い地域の山で見られる。
周りには、樹木がなく、背の低い草ばかり。
その草が、紅葉する。
いわゆる、草モミジ。
この山は、頂上から北に向かって、
おだやかな稜線が続いている。
中門岳(ちゅうもんだけ)というピークまで片道2キロ。
稜線とはいえ、非常になだらかな丘のようなもので、
《天上の散歩道》が自然によって用意されている。
木道を、ぶらぶらと遥かかなたまで歩いてゆく。
途中に、休みどころとして、ベンチが置かれてある。
あまりの気持ちよさに、リュックをおろし、ゴロリと横になる。
登山靴も靴下も脱いでしまう。
だ~れもいない。
空には雲すらない。
池塘の横で、昼寝する。
池塘に映る空は青々と輝き、頭上の空もぐんじょう色。
床は木造りなので、陽のひかりを浴びて、あたたかい。
床暖房と化している。
目をつむると、すぐに眠気が襲ってくる。
音がしない――
全くの静寂――
山の中とは、自然の独特の《音》がするもの。
鳥の声、風の音、蜂の羽音、木の葉のざわめき・・・
町に近ければ、うなりのような車の音、
空に飛びかう飛行機。
ところが、まったくの無音。
ここまで無音の山もめずらしい。
コトン・・・眠りにおちる。
おちるものの、2000mの山上の美しさの中にいると、
感じながら、陽の暖かさにまかせている。
ときおり身体におくられてくるそよ風。
唯一のもの音、「くぅ~」という自らのイビキが、
子守歌。
会津駒ケ岳・・・好きな山の最上位に、
ピンが打たれたかもしれない。