《そば街道》そこは、福島県から尾瀬をめざす街道に、
点在する蕎麦屋を総称して呼ばれている。
日本のアチコチにある蕎麦街道の中でも、
魅力あふれる道なりだ。
なんたって、秋に車で走っていると白い蕎麦の花咲く畑が、
次々に現れる。
周りは緑の森に囲まれ、カメラを向けずにはいられない。
少し走ってはパシャリッ、
ちょいと進んではパシャリッ。
これでもか
これでもか!そうこうしている内に、花も終わり、蕎麦の実がついた畑となる。
パシャリッ。

その合間を縫うように、蕎麦屋が、手を変え品を変え登場する。
古民家風、食堂風、隠れ家風、水車付き・・・
昼時、車のブレーキを踏むのは、選ばれた一軒となる。
カンでしかない。
鼻にかかった店に車をとめる。
私の鼻にかかった店は、入るなり、
自ら紙に注文を書くシステムだった。
《天盛りそば》
山登りから降りてきたその足だったので、腹がかなり空いていた。
普段は、《もりそば》のところを、気が高ぶっていたので、
思い切って天ぷらを奮発した。
さて、待つこと15分。
何をやっているのかよく見える厨房で、
ジュウジュウと油がはぜる音がする。
ご主人の手の動きが激しい。
やがて運ばれてきたソレを見て、しばし目がクルクル。
天ぷらの量が、ハンパでない。
(写真では、遠近法で少なく見えているだけ)
いったい何種類あるのか数えてみた。
10を超えたあたりで分からなくなった。
それらがすべて2本づつ揚げられている。
これって、この街道の常識なのだろうか?
普段、都内で食べている天ぷら蕎麦の、4倍と言える。
「うれしい!」
本品が目の前に置かれた時の、最初の感想である。
野菜天の大盤振る舞い!(エビ天もある)
ところが、ハシを割り、次々に天ぷら三昧となった頃、
以前感じた《ご飯とオカズの関係》問題に気づいたのである。
ごはんよりオカズの方が多くて、
うれしい涙を流していた時のことを思い出す。
今日のメインは蕎麦だ。
なのに、蕎麦を食べる暇がない。
天ぷらをバリバリと3つほど頬張って、
やっと、蕎麦をズルズル――
ナスやらカボチャやら存在感あふるる天ぷらを、
汁につけて、ガブリッ。
口の中はそれだけで、いっぱいになり、
蕎麦を受け付けるスペースがない。
とはいえ、蕎麦そのものも、まあまあの盛り付け。
けっしてケチった盛り方ではない。
なのに、蕎麦がそろそろザルをコスルようになってきたのに、
まだまだ天ぷらが肩をいからせている。
ふぅ~~
日ごろの天ぷら足りない恨みを、
会津に向かう蕎麦街道で、おおいに晴らしたと、
誇らしげな気持ちになったのであった。

これでもかぁ~~