「イシマルさん、原稿依頼です」 事務所のマネージャーから、書き物依頼の連絡がある。
「400字の原稿を連載10本お願いします」
「内容は?」
「自由に」
「期限は?」
「二か月後」
しかして、翌日、
「書いたヨ」
「も・もうですか・・速いですネ!」
数日後――
「内容が依頼されたモノと違ったらしいです」
「ゲッ」
「食に関してでした」
「ウグッ」
「書き直せますか?」
「ホンゲッ」
しかして翌日。
「新たに書いたヨ」
「え~速いですネ」
「文句あっか」
「期限まで、あと二か月あるんですけんど」
「もう送って、また内容が違うとか言われる前に」
「はい!」
依頼された原稿を書くのは、なんか速い。
速ければいいってもんではないのは分かっている。
しかし、書きだすと速い。早い。疾い。
書き直しなさいと言われれば、素直に書き直す。
その書き直しも早い。
前に書いたモノは、どんどん捨てる。
執着はない。
未練もない。
時に、「前に書いたモノを」と催促されることもあるが、
すでにない。
私の知らない世界に旅立っている。
「あのぉ~最終稿はこれでいいかとの問いですが」
「初稿イコール最終稿です」